- コードバンってどんな革なの?
- 他の素材と違うところはあるの?
- 手入れの手順を教えてほしい
革靴に使われている素材の中でも人気の高い『コードバン』。
他の素材と違った独特の雰囲気や艶感から多くの革靴愛好家を魅了しており、いつかは自分も手に入れてみたいという方も多いのではないでしょうか?
でも、コードバンについて調べてみると次のような意見を目にします。

他の素材と違って手入れが難しい!

すぐに白っぽくなってしまう・・・
こんな意見を聞いてしまうと、購入する事に躊躇してしまいますよね?
しかしコードバンは他の素材と比べてみて違いこそありますが、革の構造や特徴を理解することで誰でも簡単に手入れが出来ます。

私も素材の特徴を理解することで、今では難なくお手入れができるようになりました!
今回のブログでは『コードバンの革靴の手入れ方法』について解説します。
- コードバンの特徴
- 手入れの際に気をつける3つのポイント
- 手入れ手順・必要な道具
コードバンは特に傷には耐性がありますが、とにかく水に弱い素材です。
使う道具を工夫することで、失敗のリスクを抑えながら手入れを行えるようになります。
画像付きで分かりやすく解説します。是非、最後までご覧ください。

コードバン(コードヴァン)は馬のお尻の革


コードバンってどんな革なの?
『コードバン』とは馬の臀部(でんぶ)の革を利用した素材の事です。
臀部とはお尻の部分を指します。

家畜として飼われている牛や豚、羊や山羊などは表面の革(表皮)の下に「乳頭層」「網状層」と呼ばれる2層の革の層があります。
対して馬には上記の2層に加えて網状層の間に「コードバン層」と呼ばれる2mmほどの薄い層がもう1層あり、3層構造になっています。

このコードバン層を削りだしたものがコードバンになります。


削り出したコードバン層をオイルにつけて、グレージングと呼ばれる革の表面を平らにならす工程を経て美しい艶をまとった革に仕上がります。

色々な工程を踏んであの艶が作られてるんだね。
コードバン層はどんな馬の臀部にもあるという訳ではありません。
削り出してみないと品質や傷の有無、そもそもコードバン層があるのかどうか分からないと言われています。
コードバン層を削り出す為には高い技術力が必要とされており、削り出す作業が採掘作業にも重なるのでコードバンは「革の宝石」「革のダイヤモンド」と表現されることがあります。
コードバンの手入れで気をつける3つのポイント

ここではコードバンの手入れを行う際にきをつけるべきポイントを3つ紹介します。
順番に解説していきます。
水濡れに弱い

コードバンは水濡れに弱いことで有名です。
元々コードバン層は革の内側にある層を削り出したものなので、外側の層よりも外からの刺激に弱く成分を吸収しやすいという特徴があります。

だから水分を吸収しやすいんだね・・・。
一度に大量の水分を吸収してしまうとシミなどの靴トラブルの原因に繋がります。
雨の日に履くのは避けると共に、普段の手入れの時も水分をつけ過ぎないように注意が必要です。
手入れで使うクリーナーを水性のものから、固形の物に交換するだけでリスクをグッと抑えることができます。

靴磨き職人の方も実践されているテクニックなので、取り入れてみて下さい。
毛羽立ち

コードバンは元々、一部の馬のお尻の部分にある厚さ2mmほどの「コードバン層」と呼ばれる薄い層を削り出したもの。
オイルに漬けたりグレージングと呼ばれる作業で表面に圧力をかけて平らに鳴らしていますが、元々は起毛素材と同じように毛羽立ちのある素材です。
履き込んでいく内に、負荷がかかりやすい履きジワ部分の寝かせていた毛が起き上がってきてしまいます。

起き上がった毛が白っぽく見えちゃうんだね!
後ほど手入れ手順の際に詳しく解説しますが、レザースティックと呼ばれる固い棒状の道具を使って起きてしまった毛を寝かせます。
レザースティックは値段が高額なので、健康器具ですが同じ水牛の角を使用して作られている「かっさ棒」が価格も安くおすすめです。
ブルーム

寒い時期になると革の表面に白いカビのようなものが浮き出てくることがあります。
これは「ブルーム」と呼ばれるもので、革に含まれている油分などが浮き出て表面で固まったもの。
コードバンの靴にはよく見られる現象で、革自体には害はないので問題はありません。

ただ見た目が気になるよ~。
どうやって落とせばいいの?
ブルームはブラッシングや布で拭き取ることで簡単に落とせます。

通常の靴クリームとコードバン専用クリームの違い

靴クリームには様々な種類がありますが、中にはコードバン専用の靴クリームも販売されています。

普通の靴クリームと何が違うの?
ここではコードバン専用クリームと、通常の靴クリームではどのような点で違いがあるのか比較してみました。

比較する靴クリームは同社から販売されているクレム1925です。
商品名 | コードバンクリーム | クレム1925 |
成分 | 油脂・ロウ・有機溶剤 (ニートフットオイル、ミツロウ) | 油脂・ロウ・有機溶剤 (ミツロウ、 シアバター、 カルナバワックス、 モンタンワックス、 テレピン油) |
容量 | 75ml | 75ml |
価格 + tax | ¥2,200 | ¥2,200 |
カラー | 全5色 | 全15色 |
どちらも「油脂」「蝋」「有機溶剤」から作られていますが、公開されている成分を比較してみると大きな違いがあります。
シアバターやモンタンワックスなど植物性の成分を多く採用しているクレム1925に対して、コードバンクリームの方はニートフットオイルを採用しています。
同じ動物性の成分になるので革馴染が良く、乾燥しやすいコードバンには適していると言えます。
ただ、通常の靴クリームでは栄養補給できないのか?と言えばそんなことはありません。
靴クリームをすでにお持ちの場合は、コードバンの手入れの為に買い替えなくても問題ありません。

使っているクリームが無くなったら買うくらいの感覚でOKです。
コードバンシューズ(Alden54321) 手入れ手順&道具

ここではコードバンの手入れに使う道具と、手入れ手順を紹介します。

私が普段の手入れで使っている道具はこちらです。
- 靴クリーム
- デリケートクリーム
- ワックス
- クリーナー(固形)
- 馬毛ブラシ
- 豚毛ブラシ
- 布
- 水
- レザースティック(かっさ棒)
細かい部分の手入れをお行いやすくするために、靴紐は外しておきましょう。

手入れの手順は次の通り。
順番に解説していきます。
馬毛ブラシでブラッシング

馬毛ブラシで靴の表面に付着した塵やホコリ、花粉などの汚れを払い落としていきます。
靴のお手入れを行う時にまず最初に行う作業です。

馬毛は柔らかいので靴を傷つける心配はありません。
音が鳴るくらい大きく動かして全体をブラッシングしていきましょう。
特にアッパーとコバの間の部分は汚れが溜まりやすいので、入念にブラッシングしていきましょう。

全体をブラッシングできたら完了です。
クリーナーで汚れ落とし

クリーナーを使って前回の手入れで塗った靴クリームやワックス、付着した油汚れなどを落としていきます。

今回は固形のクリーナーを使用していますが、液体のクリーナーでもOKです。
クリーナーを使う時には布を指に巻き付けて使用します。
クリーナーで浮かせた汚れを布で絡めとることで古い汚れを拭き取るので、素手で行わないようにしましょう。
靴の表面を拭いていると、古い汚れで布の表面が汚れてきます。

汚れた面を使い続けると拭き取った汚れを塗り広げることになってしまいます。
使用面が汚れてきたと感じたら、適宜交換していきましょう。
デリケートクリームで栄養補給

デリケートクリームで潤いを補給します。
靴クリームだけでも栄養補給を行えますが、デリケートクリームを併用した方が革が柔らかくなり履き心地も良くなるので併せて使います。

この工程は省略してもOKです。
塗り過ぎないように指先に少量ずつデリケートクリームをとって、靴全体に薄く塗り広げていきます。
コードバンは水に弱いのですが、水分の補給は不要という訳ではありません。
定期的にデリケートクリームで潤いを重点的に補給してあげることで、より良いコンディションになると考えています。
靴クリームで栄養補給

靴クリームで栄養補給を行います。
デリケートクリームと同様に少量を指先に取って靴全体に薄く塗り広げていきます。

足りなくなったら再度少量ずつクリームを補充しよう!
指で直接クリームを塗り込むとクリームが体温で温められて、革に浸透しやすくなります。
もし指が汚れてしまうのが嫌な場合は「ペネトレイトブラシ」を使うことで、指を汚さずに塗り広げられます。
レザースティックで毛羽立ちを抑える

靴クリームを塗ったらレザースティックを使って、コードバンの毛羽立ちを抑えます。
ここでのポイントは『シューツリーを入れて行う』こと。
シューツリーを入れずに行っても靴がくぼんでしまい、うまく手入れを行うことができないので必ずシューツリーを入れてから行うようにしましょう。

シューツリーが無い場合は自分の手を入れてもOKだよ!

履きジワ部分が特に毛羽立ちが起きやすいので、重点的に行いましょう。
コードバンは傷に強い革なので毛羽立ちを抑えるくらい力を入れて行います。
少し跡が残ってしまいますが、この後の手入れで目立たなくなるので問題ありません。

豚毛ブラシでブラッシング

豚毛ブラシで靴全体をブラッシングしていきます。
豚毛ブラシを使う理由は次の3つ。
- クリームの浸透を助ける
- 余分な靴クリームを弾き落とす
- 革のマッサージ
ブラッシングを終えた状態がこちら。

靴クリームにも蠟が含まれているので、この状態でも充分な艶が出てくれます。

レザースティックの傷も目立たなくなったね!
布で余分なクリームを拭き取る

次に布を指に巻いて表面に残った余分な靴クリームを拭き取ります。
靴クリームを少量ずつ塗り広げて、豚毛ブラシで弾き落としても表面にはまだ余分なクリームが残っています。

このクリームを放置してしまうと、カビやシミの原因に繋がります。
布の綺麗な面を使用して全体を拭き取っていきましょう。
指で触れてみてべた付きがなくなれば完了です。
ワックスで磨く

最後にワックスで仕上げていきます。まずは下地となるワックスを塗っていきます。
革の表面には無数の毛穴があるので柔らかいワックス(ソフトワックス)で下地を作り、固いワックス(ドライワックス)で仕上げることで綺麗な光沢を出せます。

下地が出来上がったら布にワックスと少量の水をつけて磨いていきます。

この工程を何度も繰り返して、自分の好みの艶感が出るまで磨いていきます。
完成

こちらが手入れが完了した靴です。
靴全体に艶が出て非常に高級感のある仕上がりになりました。
履きジワ部分の毛羽立ちや、ブルームも綺麗になりました。

ワックスは少量しか使っていませんが、元々艶感の強い素材なので綺麗な艶が出てくれました。


手入れが難しいって思ってたけど、ポイントを抑えれば僕にもできそう!

最後にもう一度、手入れのポイントをおさらいしておきましょう!
- 水に弱い → 固形のクリーナーを使う
- 毛羽立ち → レザースティックを使う
- ブルーム → ブラッシング
まとめ
今回はコードバンの手入れ方法について紹介しました。
自分も購入したばかりの頃は高価な素材なので、手入れを行うのに怖さがありましたがポイントを抑えておくことで難なく手入れが行えるようになりました。
レザースティックを使うなど他の革靴にはない工程がありますが、それもまたコードバンの魅力だと思います。

コードバンは手入れをしていくごとに艶が増していくので、経年変化が楽しみですね!
コードバンの手入れ方法が分からないという方は、参考にしてみて下さい。