どんな種類があるの?革靴の素材と加工方法を徹底解説!
- 革靴ってどんな素材を選べばいいの?
- どんな種類の素材がある?
- それぞれの素材の特徴が知りたい!
革靴を選ぶ際にデザインや色は意識するけど、素材についてはほとんど意識をしていないという方が多いのではないでしょうか?
新品の状態では違いがないものの履き続けるとエイジングが進む素材や、反対にほとんど経年変化しない素材など特徴が異なります。
また素材によって靴の価格、取扱店舗の数や販売量も異なるので入手しやすさも変わってきます。
素材によって手入れ方法や手入れに使う道具も変わってくるよ!
この様な素材ごとの違いを理解せずに靴の見た目や価格だけで選んでしまって後々後悔してしまう方も多いです。
自分も初めて革靴を購入した時は素材ごとの違いが理解できておらず、特に手入れについては苦労しました。
今回のブログでは「革靴に使用されている素材」について図解を交えながら分かりやすく解説してきます。
それぞれの素材ごとの特徴や注意点を分かりやすく解説していきます。
- 革靴に使われる素材
- 鞣し(なめし)加工とは?
- 素材ごとの特徴&注意点
結論から申し上げると定番の素材を使いたいなら「牛革」、コスパを重視するなら「合皮」を使用した革靴を選んでおけば間違いありません。
その理由を含め画像付きで分かりやすく解説していきますので、是非最後までご覧ください。
革靴に使われる革ってどんなものがあるの?
革靴の素材ってどんなものが使われているの?
革靴を作る為に次のような素材が使われています。
- 一般革
- エキゾチックレザー
- 加工革
- その他の革
こうやってみると革靴に使われる革ってたくさんの種類があるんだね!
①~③は動物の皮を加工したもので、④のその他の革は布を加工して見た目を革に似せたものの事です。
この中で私たちに最も身近な素材は①番の一般革と④番のその他の革です。
一般革の中でも1万円以上の紳士靴は「牛革」を使った革靴が一般的で、価格が抑えられている靴が「合成皮革」等を使用したその他の革の靴です。
百貨店の紳士靴売り場で売られている靴が「一般革」。
量販店で数千円で購入できる靴が「その他の革」というイメージです。
素材ごと特徴をまとめると次の通りです。
種類 | 素材 | 価格 | 取扱店舗 | 特徴 | 栄養補給 | |
一般革 | 牛、豚、羊 山羊、馬 | 動物の皮 | 高い | 多い | 定番の素材 | 必要 |
エキゾチックレザー | ワニ、ヘビ、トカゲ オーストリッチ サメ、ペッカリー 等 | 動物の皮 | 高い | 少ない | インパクト大 上級者向けの素材 | 必要 |
加工革 | ガラスレザー 起毛革、エナメル シュリンクレザー 等 | 動物の皮 | 普通 | 普通 | 一般革に無い見た目 2足目以降におすすめ | 必要 |
その他の革 | 合成皮革(合皮) 人工皮革 | 布 | 安い | 多い | コスパ〇 長持ちしづらい | 不要 |
この中でおすすめのしたい素材が一般革です。
一般革の中でも特に「牛革」がおすすめです。
牛革の革靴は取り扱っている店舗が多く、デザインのバリエーションも豊富です。
きちんと手入れを行えば10年以上履き続ける事ができ、履き込むうちにエイジングが進んでいくので靴を育てる楽しみを味わう事ができます。
ただし牛革の革靴は2万円前後で販売されているので、初めて革靴を購入する方は少し躊躇してしまうかもしれません。
お手頃な価格で靴を選びたい方は「その他の革」の靴がおすすめです。
『合成皮革』と呼ばれる素材が主流です。
合成皮革(合皮)を使用した靴は安い物なら2千円程度で購入する事ができます。
見た目もパッと見ただけでは本革なのか合皮なのか分からないので、特に素材にこだわりがないのであればこちらも選択肢に入れてもOK。
牛革同様デザインも豊富で動物の皮の様に靴クリームを使った手入れも不要なので、手入れに時間をかけたくない方にもおすすめです。
長年履き続けたいなら「牛革」、コスパを求めるなら「合皮」を選べばOKだね!
革靴のデザインについてはこちらのブログで詳しく解説しておりますので、併せてご覧ください。
皮を鞣す(なめす)と革になる
そもそも「皮」と「革」は何が違うのでしょうか?
動物の体から剥がされて、加工されていない状態の皮膚の事を「皮」と呼びます。
皮には水分が多く含まれているので、そのまま放置してしまうと腐ってしまいます。
それだけではなく皮が乾燥してしまうと柔軟性がなくなり加工するのが困難に。
そのような状態になるのを防ぐ為に行う加工の事を『鞣し(なめし)』と言います。
鞣しによって加工された動物の皮膚は「皮」から「革」と呼ばれるようになります。
鞣し加工の方法は次の3つが定番の手法になります。
鞣しについての理解が深まれば、より素材ごとの特徴が分かるようになるのでしっかりと抑えておきましょう。
順番に解説していきます。
タンニン鞣し
「タンニン鞣し」は最も歴史のある鞣し加工の事です。
記録では古代エジプトまで遡るみたいだよ!
天然の樹木や植物の葉・果実等から抽出した『渋(しぶ)』と呼ばれる成分を利用します。
ワインやお茶を飲んだ時に感じる渋みが「渋」です。
渋を使って作られた「タンニン液」と呼ばれる液体に浸す事で皮を柔らかく加工していきます。
植物の成分を使っているので「植物タンニン鞣し」とも言われています。
自然由来の成分で加工しているので、革本来の雰囲気を残しながら丈夫な革に仕上げる事ができます。
「クロム鞣し」のように化学物質を使っていないので、人体に優しいのも嬉しいポイント。
経年変化を楽しむ事ができるのもタンニン鞣しの特徴だよ!
少しずつ濃度の濃い液に浸していくので仕上がりまでに時間を要します。
他の製法と比べると仕上がりまでに倍以上の時間とコストがかかる事、革製品の値段に転嫁されてしまう点がデメリットとして挙げられます。
クロム鞣し
「クロム鞣し」は塩基性硫酸クロムという化学薬品につける製法の事。
100年程前に確立された技法で、タンニンなめしと比べると比較的新しい技術です。
加工時間が5日間程度でなめす事ができるので、短時間で大量に生産できる様になり製造費を削減する事が出来ました。
タンニン鞣しで鞣された革と比較すると柔らかく、熱や傷、摩擦などに強く着色しやすいという特徴があります。
短時間 & 安価に鞣す事が出来るので重宝されている製法です。
デメリットとしてはクロムは金属製の鞣しになるので、金属アレルギーがある方は注意が必要です。
またタンニンが含まれていないので経年変化せず、エイジングを楽しむ事ができません。
劣化してしまうと元に戻りづらいのも気になるポイントです。
コンビネーション鞣し
「コンビネーション鞣し」は名前の通り鞣しの工程を組み合わせた製法の事です。
「コンビ鞣し」、「ハイブリッド鞣し」って呼ばれる事もあるよ!
鞣しの工程を組み合わせる事でそれぞれの長所を活かし、デメリットを補いながら独特な風合いに仕上げる事が出来ます。
コンビネーション鞣しは主にタンニン鞣しと、クロム鞣しの組み合わせの事を指します。
クロム鞣しを行った後にタンニン鞣しを行う事で弾力・強度に優れながら、経年変化を楽しめる革を鞣す事が可能になります。
革の雰囲気を残しつつ、短時間で鞣す事が出来るので注目されています。
良いところ取りをしている一方で、それぞれの鞣しと比べるとどっちつかずの革に仕上がってしまいます。
タンニン鞣しの革よりも経年変化を楽しめず、クロム鞣しの革よりも耐久性が劣ります。
タンニン鞣し | 革本来の風合いを残しつつ、経年変化を楽しめる |
クロム鞣し | 着色力が高く、傷・熱・摩擦などに強い |
コンビネーション鞣し | タンニン鞣しとクロム鞣しの特徴を併せ持つ |
革靴に使われる革は主に4種類
鞣しについては理解できたよ!
次は最初に教えてくれた革の種類について詳しく教えて!
冒頭でも軽く触れましたが、もう一度革靴に使用される革をおさらいしましょう。
それぞれのどんな素材が使われているのか、素材ごとの特徴を詳しく解説していきます。
一般革
『一般革』は家畜として飼育されていた動物の皮を指します。
食肉などに加工される過程で副産物として供給されるので、量が多く入手も容易な事から革靴に使われる最もポピュラーな素材です。
革靴だけでなく、鞄やジャケットなど様々な革製品に使われています。
最も身近な素材と言っても過言ではありませんね。
『一般革』は次の様な素材が挙げられます。
革靴で使用される事が多いのは『牛革』です。
流通している革靴の大半が牛革を使用していて、革靴=牛革と言っても間違いではありません。
私たちが革靴を買いに行った際に店頭に並んでいる靴はほとんどが牛革を使用した靴です。
豚とか山羊の皮を使った靴ってあまり聞いた事がないけど・・・
馬、豚、山羊は革靴の素材として使われる事は少ないですが、靴の手入れで使うブラシの毛として採用されています。
革靴に使われる革は素材となる動物の年齢や性別、使用部位によって名前が異なります。
素材ごとの特徴や名前についてもう少し深堀していきましょう。
牛
市場に出回っている量が多く、最も定番の素材が『牛革』です。
牛革の特徴は丈夫でありながら柔らかさがある事。「傷が付きやすい」、「しなやかさが必要」など難しい条件をクリアした靴の素材として最適だと言えます。
牛革は「生まれてからの年数」や「性別」によって更に細かく分類されます。
ハラコ | お腹の中 or 出産後すぐに死んでしまった仔牛 |
ベビーカーフ | 3か月までの仔牛 |
カーフ | 3~6ヶ月までの仔牛 |
キップ | 6ヶ月〜2年までの仔牛 |
カウ | 2年以上の雌牛 |
ステア | 2年以上の去勢された雄牛 |
ブル | 3年以上の去勢されていない雄牛 |
表の下に進むにつれて年齢が増えていきます。
牛の年齢が若ければ若いほど肌のきめが細かく、1匹から採取できる量が少ないので希少性が高く価格が高額になります。
歳を重ねていくにつれて革の表面にガサつきが目立ち、厚さ・固さもありますが値段が抑えられてきます。
革靴で最もよく使われている物が『ステア』です。
2歳以下の革に比べると肌の質感や柔らかさは劣りますが、丈夫で流通量も多く価格も比較的安価なのでステアを採用するメーカーが多いそうです。
豚
『豚革』はピッグスキンと呼ばれ、国内のシェアは1%未満と牛革と比べるとマイナーな素材になります。
豚革は摩擦に強く、丈夫で他の革と比べてみて軽いという特徴があります。
また毛穴が貫通しているので通気性に非常に優れています。
毛穴が貫通している事からも分かる通り、表皮の下が皮下組織になっているのでほとんど加工する事ができません。
革靴の他にも衣類や革小物に採用されています。
山羊
『山羊革』は非常に強度に優れた素材。
山羊革は牛革と比べると半分くらの厚さながら、強度に関しては牛革よりも優れています。
薄くて軽く、弾力もありながら頑丈で型崩れしづらいので革靴として採用される事が多いです。
山羊革は靴の表面が『シボ』と呼ばれる小さな模様がいくつもあり、傷や摩擦に強く傷が付いても目立ちにくいという特徴があります。
山羊革は年齢で次の2種類に分類されます。
キッド | 6ヶ月までの仔山羊 |
ゴート | 6ヶ月以降の山羊 |
他の素材と一緒でキッドの方が希少性が高く高級革として扱われてるよ!
羊
『羊革』は牛革と比べて強度や耐久性は劣りますが、非常に柔らかく肌馴染の良さが特徴。
山羊革と違いが無いように思われがちですが、山羊毛の方が革の繊維が密になっているので傷に強く摩耗しづらく丈夫です。
山羊革と同様『シボ』と呼ばれる小さな模様が革の表面にあります。
一方の羊革は繊維が粗く、繊維同士の間に空気を含む事で保温性能に優れています。
防寒用のジャケットなんかで使われる事が多いみたいだね!
ラム | 6ヶ月までの仔羊 |
シープ | 6ヶ月以降の羊 |
他の一般革と比べて革靴の素材として採用される事は珍しいですが、包み込まれるような履き心地に魅了される方が多くカジュアル向けの靴として販売されています。
馬
『馬革』はホースレザーやホースハイドとも呼ばれ、牛よりも運動量が豊富な馬の革は脂肪分が少なく薄さと丈夫さを兼ね備えた素材です。
柔軟性に優れていて加工がしやすいので、サイフや衣類など様々なレザーアイテムとして使われています。
ポニーレザー | 体高140センチ程度にしかならない小型の馬の革 |
ホースヌメ | 馬皮をタンニン鞣しで加工した革 |
ホースフロント | 馬の首の部分の革 |
ホースハイド | 馬の胴体部分の革 |
コードバン | 馬の臀部(お尻)の革を削ったもの |
この中でも特に人気の高い物が「コードバン」。
コードバンは馬の臀部の皮の下に1~2mm程しかないコードバン層と呼ばれる層を削り出した素材の事を言います。
美しい見た目と経年変化でより一層味が出る事から多くの靴磨き愛好家に人気があります。
Aldenを始めとする高級紳士靴メーカーでは定番の素材ですね。
1頭から採取できる量が少なく、削り出すのにも熟練された技術が必要になります。
採取の難しさや希少性が高い事から「革のダイヤモンド」と呼ばれています。
エキゾチックレザー
『エキゾチックレザー』は一般革で紹介した牛や豚、馬などの家畜を除いた脊椎動物の革の総称の事。
家畜として育てられた一般革は「食の副産物」として流用されますが、エキゾチックレザーは革製品を作る為だけに飼育、捕獲された動物の皮を指します。
現在は絶滅の可能性がある野生動植物の種の国際取引を取り締まる『ワシントン条約』によって流通量が制限されており、希少価値が高まっています。
このような問題から、最近ではエキゾチックレザーの使用を控えるブランドが増えてきています。
エキゾチックレザーはどのような素材が当てはまるのか詳しく見ていきましょう。
あれ?エキゾチックレザーってワニとか爬虫類革の事じゃないの・・・?
以前のエキゾチックレザーは『レアレザー』と呼ばれていて、昔はワニ革を始めとする爬虫類の革の事を指していました。
現在は定義が見直されて爬虫類以外も含まれるようになりました。
エキゾチックレザーの魅力は一般革にはない見た目のインパクトの強さです。
特にワニやヘビを始めとする爬虫類革のインパクトは絶大で靴全体に使用するのはもちろん、靴のパーツの一部に採用するだけで独特のアクセントを加える事ができます。
エキゾチックレザーどんな特徴があるの?
エキゾチックレザーの中でも爬虫類や魚類の革は次のような特徴が挙げられます。
- 手入れが難しい
- 水濡れに弱い
- 経年変化が起こりづらい
この中で最もよく聞くのが「繊細な素材で手入れが難しい」という意見。
これは半分が正解でエキゾチックレザーの素材自体は頑丈なのですが、注意が必要なのは革を仕上げる際の加工方法です。
エキゾチックレザーは素材の表情を活かす為に様々な方法で革を加工します。
よく用いられる仕上げ方法は次の3種類。
- グレージング仕上げ
- 仕上げ材を使った仕上げ
- マット仕上げ
『グレージング仕上げ』とはメノウの玉と呼ばれる重い石のような物を使い、革の表面に圧をかける事で繊維を寝かせて艶を出す方法の事です。
(↓ 「グレージング仕上げ」の説明は動画 8:12~)
グレージング仕上げの他にも艶を出す為に『ラッカー系の仕上げ材で艶を出す仕上げ』や、わざと艶が出ないように仕上げる『マット仕上げ』などの方法があります。
この3つの仕上げ方法はそれぞれ手入れ方法が異なります。
特に気をつけたいのが①グレージング仕上げと②仕上げ材を使った仕上げの2つです。
どちらも艶のある見た目なのですが、クリームを塗り込むと②で仕上げた革は艶が無くなり元の状態に戻すのが困難になってしまいます。
③マット仕上げの靴に普段の手入れで使う靴クリームを使うと、クリームに含まれる蝋分が鱗の細かい隙間に入り込んでしまいます。
艶が出てしまうとマットな表情が損なわれて、元の表情に戻すのが難しくなります。
①のグレージング仕上げ以外は靴クリームは使えないんだ!
だから、爬虫類革には使えないって書いてあるんだね!
素材だけでなく、仕上げ方法についても理解していないと取り返しのつかない事になりかねません。
こうした理由からエキゾチックレザーは手入れが難しいと言われています。
しかし上記の内容を理解した上でエキゾチックレザーの靴を手入れ出来すれば、簡単に足元をお洒落に彩る事ができます。
もう少しエキゾチックレザーの中で革靴に使用される素材を掘り下げていきましょう。
爬虫類
- ワニ(クロコダイル)
- トカゲ(リザード)
- ヘビ(パイソン)
革靴で使用される事が多い爬虫類革はワニ、トカゲ、ヘビの三種類です。
爬虫類革はレブタイルレザーと呼ばれ、エキゾチックレザーの中でも特に人気のある素材です。
中でも『ワニ革』の人気は非常に高く最高級品として扱われています。
「クロコダイル」、「アリゲーター」、「カイマン」など様々な種類があります。
爬虫類革の中で最も多く使用されているのが『トカゲの革』(リザードレザー)です。
トカゲ自体は数多くの種類が存在しますが革として加工できるのはほんの一部のみ。
オオトカゲの革を使用している事が多く「テジュー」と「リングマークリザード」が定番です。
ニシキヘビを主に使用する『ヘビ革』も独特の柄から高い人気を誇ります。
ニシキヘビが「パイソン」って呼ばれているから、ヘビ革の事をパイソンって呼ぶ人もいるよ!
これらの革は一般革にはない独特の模様があるのでファッション性が高く、革靴以外にも腕時計のベルトやバッグ、衣類やキーケースと言った様々な革小物にも使われています。
鳥類
『オーストリッチ』はダチョウの革の事。
革の表面に「クイルマーク」と呼ばれる羽根を抜いた時に出来るドット柄の模様が特徴です。
クイルマークが均等に綺麗に並んでいる革ほど価値が高くなります。
クイルマークが入った革はダチョウ1頭から採取できる革の4割程度しかないので、鳥類の中でも希少性の高さからエキゾチックレザーとして認定されています。
オーストリッチの最大の特徴は柔らかさと軽さ、そして牛革以上とも言われる耐久性です。
牛革って結構頑丈ってきくけど、それよりも丈夫なんだね!
耐久性に関しては諸説ありますが、牛革の2倍~10倍程の耐久力があり見た目のインパクトだけでなく実用性の高さからも人気があります。
オーストリッチを使った革製品はクイルマークの範囲によって「フルポイント」と「ハーフポイント」に分類されます。
パスケースやウォレットケース等で両面にクイルマークが入っているデザインがフルポイント、半面のみクイルマークが入ったデザインがハーフポイントです。
フルポイントの方がより多くのクイルマークが入ったオーストリッチが必要になります。その為、価格が割高になります。
脚部の皮を鞣した「オーストレッグレザー」は爬虫類革に似た鱗の様な模様が特徴的で人気があります。
オーストリッチは水濡れに弱いので一般革と同様に天候が悪い時には注意が必要です。
魚類
魚類の革で靴に流用される事が多いのは次の二種類です。
- サメ(シャークスキン)
- エイ(スティングレイ)
『サメ革』は「シャークレザー」や「シャークスキン」と呼ばれます。
細かい網目状の「シボ」と呼ばれる凹凸が特徴です。
網目の形やシボの大きさは個体によって異なるので、同じ革を使って作られた物でも微妙に表情が異なります。
サメの種類によって網目模様の荒さに違いがあります。
革質は丈夫さと柔らかさを兼ね備えており、傷が付きづらいです。
表面にはシボが入っているから傷が付いちゃっても目立ちにくいね!
海の生物の皮なので 水濡れに耐性がありますが、放置しておくと色落ちや乾燥からのひび割れに繋がる可能性があるので油断は禁物。
『エイ革』は「海の宝石」と呼ばれていて高級皮として認知されています。
「リン酸カルシウム」からなるビーズを広げたような細かい粒子状のウロコが特徴的で、強い艶と丈夫さを兼ね備えており牛革の数倍長持ちすると言われています。
エイ革は経年変化が感じづらい素材です。購入時の綺麗な状態をキープする為にお手入れする感じですね!
魚類の革のデメリットは他の革と比較して鞣しや加工に時間がかかる上に、高い技術力が必要になるので稀少性が高く価格が高くなってしまう事です。
哺乳類(一般革を除く)
- 鹿(ディアスキン)
- カンガルー
- イノシシ
- ペッカリー
『ペッカリー』とはアマゾンに生息するイノシシの様な動物の事。
耐久性、弾力性、しなやかさの3つの点で高く評価されています。
三角形の毛穴が特徴的で通気性・吸湿性に優れており、革が固くなりづらいという性質も兼ね備えています。
ただし柔らかさを維持するためには定期的なメンテナンスは必須!
油断は禁物です!
『ゾウ革』はエレファントレザーと呼ばれ高い耐久性が魅力です。
摩擦に強く、独特な凹凸に覆われているので他の革と違った雰囲気を出すことが出来ます。
水濡れにも耐性があるからガンガン使えるね!
使い込むごとに艶が出て、希少性の高さから靴の他にも様々な素材に使われます。
『カンガルー革』(カンガルーレザー)は見た目こそ牛革と似ていますが、革の密度が高いため強度は牛革の約2~3倍あり、軽く、とても柔らかい特徴があります。
激しい動きにも耐える事が出来るので、スポーツシューズやサッカーなどのスパイクに使用されます。
『鹿革』(ディアスキン)は皮の繊維が粗く絡まっているので軽さとしなやかはさ、通気性や吸湿性に優れています。
その使い心地の良さから「革のカシミヤ」と呼ばれています。
革の表面にはシボ(凹凸)があり、傷が目立ちにくく耐久性が高いです。
デメリットとしては生産量が少ない点と、力を入れてブラッシングをすると革が伸びやすい事です。
加工革
「一般革」や「エキゾチックレザー」のように素材本来の良さを活かした革の他に、あえて革を加工された革も人気があります。
こうした革を総称して『加工革』と呼びます。
革を加工する事で元々の革とは違った表情に仕上げたり、強い艶を出す、撥水効果を付与するなど様々なメリットがあります。
傷やシミ・虫食いなど革の表面に傷などがあり一般革等では使えない革を流用できるので、価格が抑えられているのも嬉しいポイントです。
革靴に使われる事が多い加工革は、次のようなバリエーションがあります。
ガラスレザー
『ガラスレザー』は鞣した後の革の表面に「ガラス」・「ホーロー」の板に貼り付けて乾燥させ、乾燥したのちに表面を削り樹脂や塗料でコーティングした革の事です。
強い光沢が魅力でワックスを使わなくても革がピカピカで高級感があるので、手入れに時間をかけたくない方におすすめです。
表面がコーティングされているので水濡れに強く、雨用の靴としても高い人気を誇ります!
シュリンクレザー(シボ革)
『シュリンクレザー』は「縮む(shrink)」という意味。
名前の通り、鞣しの段階で特殊な薬品に浸けたり熱を加えることで革を収縮させてシボ(シワ)を出した革のことをいいます。
シボが表面にあると革全体がふわっとした雰囲気になるよね!
シボによって傷が目立ちにくく柔らかくなるのでので、綺麗な状態を長く保つことができます。
起毛革
天然皮革の表面をサンドペーパー等の研磨剤を使用してけば立たせたのが『起毛革』です。
表面を起毛させる事で見た目の印象も肌触りも柔らかくなりお手入れも簡単なので、紳士靴からカジュアルシューズまで幅広い層に人気のある素材です。
特別水に強い素材ではないのですが、防水スプレーを吹きかければ雨用の靴として使うこともできます。
起毛素材の靴を履いていると一気にお洒落に見えるよね!
見た目の印象だけでなく手入れ方法も天然皮革とは全く異なります。
靴クリームやワックスで栄養補給や艶出しを行う本革の靴に対して、起毛素材は専用のスプレーや栄養成分が含まれているミストを吹きかけて手入れを行います。
毛羽立たせているので、ワックスを使って靴の表面を鏡のような強い光沢を出すという事も行いません。
手入れ道具も方法も全く違うので、紹介している素材の中では最も特殊な素材と言えます。
起毛革は主に次の4つが使われます。
- ヌバック
- スエード
- ベロア
- バックスキン
色々種類があるんだね!
4種類もあるけど何が違うの?
使用する素材は一般革で紹介した家畜の革を使用します。
唯一、バックスキンだけは「鹿の革」を使用した起毛革に限定されています。
この4種類のは『削る革の部位』と『使用する素材』によって異なります。
削る革の部位は革の表面と裏面の2箇所。
革の表面部分を『銀面(ぎんめん)』、裏面部分を『床面(とこめん)』と呼びます。
銀面を削って起毛させたものが「ヌバック」と「バックスキン」。
対して床面を削ったものが「スエード」と「ベロア」です。
ヌバックはティンバーランドのブーツなんかでよく見かけるよね!
「ヌバック」は銀面の革をやすりがけすることで細かい起毛を作ります。
毛足が短いので他の起毛素材と比べると滑らかでツルっとした印象。
「バックスキン」は鹿の銀面を削った革のこと。
軽さと丈夫さを兼ね備えた素材で通気性に優れているので、汗をかいて蒸れやすい革靴には非常に相性の良いです。
防臭効果も期待できます。
ただ、最近は銀面を削った革を総称して「バックスキン」と呼ぶことが多いです。
それぞれの違いを簡単にまとめてみました。
素材 | 削る革の部位 | |
ヌバック | 牛・豚・山羊 等 | 銀面(表革) |
スエード | 牛・豚・山羊 等 | 床面(裏側) |
ベロア | 牛・豚・山羊 等 | 床面(裏側) |
バックスキン | 鹿 | 銀面(表革) |
「スエード」と「ベロア」は素材も削る部位も全く同じです。
「スエード」はコートやジャケットなどの衣類にも採用されることの多い素材で、毛足が短いので触り心地が良く柔らかい雰囲気が特徴。
「ベロア」の方が成牛の革など大型の動物の革を起毛させるので毛足が長く、起こした毛が粗いという特徴があります。
起毛素材でありながら使い込んでいくうちに馬の毛並みのような、ベロア独特の艶が出てくる点もスエードとの違いだと言えます。
スエードの方が小動物の革を使っているので、きめ細かい表情に仕上がっています。
起毛革のメリット | 起毛革のデメリット |
本革にはない柔らかい雰囲気 手入れが簡単 | 手入れ道具が全く違う |
エナメル革(パテントレザー)
『エナメル革』は鞣しが終わった革の表面を合成樹脂や、アマニ油などでコーティングした革の事です。
天然皮革をコーティングすることで強い光沢を出す事ができ、耐久性も高く、汚れがつきにくいという特徴もあります。
パーティなどで履く靴のイメージですね!
天然皮革よりも価格が安いので購入のハードルが低いのもおすすめポイント。
表面が樹脂でコーティングされているので水濡れに強く、雨の日用の靴としても人気があります。
エナメルレザーとは、天然皮革をプラスチックのような物質で覆い、光沢のある表面を作ることで得られる皮革の一種です。エナメルレザーは、天然皮革と比較して耐久性が高く、汚れがつきにくいです。また、エナメルレザーは、天然皮革よりも安価であるため、革製品を手に入れる際には、エナメルレザーを選択する人が多いです。よりも防水性が高いため、雨の日には特に人気があります。
コーティングと乾燥を何度も繰り返す事でガラスレザー以上の強い光沢と、撥水性能を兼ね備えています。
エナメルは『パテントレザー』とも呼ばれてるよ。
女性用の靴で使用される事が多く、紳士靴でもドレスシーンで履く靴にぴったりです。
汚れだけでなく靴クリーム等も弾いてしまうので、表面の汚れを落とすだけでOKなのでお手入れは簡単です。
履き込んでも経年変化を感じづらいので、長年履いて変化を楽しむというよりもコーティングが剥がれないよう劣化に注意しながら扱う素材と言えます。
エナメルレザーのメリット | エナメルレザーのデメリット |
手入れが不要 強い光沢 水濡れに強い | 経年劣化が避けられない 加水分解でべたつく |
オイルレザー
『オイルレザー』は皮を鞣す工程で油分や、蝋分を染み込ませた革の事。
オイルドレザーと呼ばれることもあります。
アマニ油を始めとする様々な種類の油を使用して、革にたっぷりと油分を染み込ませるので何も加工していない皮よりも滑らか潤いがあり、耐久性にも優れています。
しっとりとした見た目が特徴ですね。
油分をたっぷり染み込ませることで水が浸透しづらく堅牢性が高い丈夫な革になり、使い込んでいくと革に染み込んでいた油分が表面に浮き出て独特の表情に変化します。
過酷な環境で使用する事を想定したアウトドアシューズや、ワークブーツ等で採用される事が多い素材です。
ただオイルドレザーは革に油分を浸透させているので柔らかさがあり、靴を履いているとちょっとした事で傷が入ってしまいます。
革に染み込ませた油分が服に付いちゃうかもしれないね。
また、油分を吸っているので他の革よりも重く、アウトドアシューズの場合は厚さのあるソールとも相まって際の重さを感じます。
油分が抜けてくると乾燥して革が固くなってしまうので、手入れを怠ると履き心地が悪くなってしまいます。
オイルドレザーのメリット | オイルドレザーのデメリット |
水濡れに強い 耐久性◎ | 傷が付きやすい 重い |
その他の革
ここまでは一般革やエキゾチックレザーなど動物の皮膚を使用した天然皮革を紹介してきました。
靴に使用される革はこれらの他に「革に似せて作られた素材」があります。
靴に使用される素材は次の2種類です。
- 合成皮革(合皮)
- 人工皮革
「合成皮革」(以後:合皮)と「人工皮革」は共に布地の表面をポリウレタン(PU)や、ポリ塩化ビニル(PVC)と合成樹脂でコーティングした素材です。
最近革靴にも流用される事が多い『GORE TEX(ゴアテックス)』もここに分類されます。
革というよりもビニールに近いイメージだね!
表面が樹脂でコーティングされているので水濡れに強く、雨の日用の靴としては定番の素材です。
天然皮革は水に濡れてしまうと伸縮性が悪くなり、手入れを行わずに放置してしまうとひび割れや履き心地が悪くなってしまうことがあります。
合皮靴は水濡れに強く天然皮革の様に栄養補給を行う必要がないので、濡れてしまっても全く問題ありません。
これらの素材は、他の素材よりも安価であることも一つのメリット。
素材の品質が一定で傷やシミ等の心配が不要で、天然皮革と比べると価格も安く靴を安価で販売する事ができます。
靴の量販店で売っている数千円の靴は、ほとんどこのどちからの素材を使っています。
エキゾチックレザーのように革の為に動物を処分する必要がないので、環境に優しい点も高く評価されています。
最近は合皮等を製造する技術が格段と向上していて、パッと見ただけで天然素材か合皮かを判断するのはプロでも難しいと言われています。
デメリットとしては経年劣化でボロボロになってしまう事。
合皮の靴って履いていると表面部分が剥がれてきちゃうよね。
この合皮製品の避けては通れない劣化を『加水分解』と言います。
加水分解は合皮製品に起こる経年劣化でゴミの吸着や空気中の水分、日光などの紫外線やちょっとした傷などが原因で革の表面がべた付いたりボロボロと剥がれてしまいます。
合皮は製造されたタイミングから劣化が進むと言われています。
一般革は履き込んでいきに徐々に味が出てきて、丁寧に手入れを行えば10年以上履き続ける事ができます。
合皮の場合は加水分解を始めとする劣化を前提としているので、使用頻度にもよりますが3年程度で症状が出始めるので使い捨て前提の素材だと考えましょう。
長期間履き続ける靴としては不向きな素材なんだね。
加工革のメリット | 加工革のデメリット |
手入れが不要 安い 環境に優しい | 経年劣化が避けられない 加水分解でべたつく |
まとめ 迷ったら牛革の革を選ぼう!
今回は革靴に使用されている皮の種類について詳しく紹介させて頂きました。
素材ごとにメリット・デメリットや見た目、手入れ方法など様々な違いがあるのでその特徴を理解する事で靴選びが更に面白くなります。
皆様も素材を意識して靴を選んでみて下さい!
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