- 山羊毛ブラシってどうやって使えばいいの?
- 使ってみたら逆に曇ってしまうって聞くけどどうして?
- 高額の道具だから失敗したくない!おすすめの道具を教えて!
山羊毛ブラシは靴磨き職人の方々も愛用されている憧れの道具です。しかし、馬毛や豚毛のブラシと比較してみると非常に高額なので簡単に手を出す事ができない道具のひとつです。
その上、購入された方のコメントを見てみると「逆に磨いた部分が曇って汚くなってしまった」、「思っていたよりも綺麗にならない」との意見があり購入する事を躊躇ってしまいます。

自分も靴磨きを始めたタイミングで山羊毛ブラシを購入したのですが、全く同じ考えを持っていました。
しかし、靴磨き専門店に足を運んでみたりショップの店員さんと話してみて、自分なりに山羊毛ブラシの使い方・使うタイミングを理解する事ができました。
- 山羊毛ブラシの使い方・使うタイミング
- 山羊毛ブラシの育て方
- おすすめのブラシと選ぶポイント
扱いが難しい道具ですが、使いこなせるようになれば自分の靴磨きのレベルをもう一段階アップさせてくれる素晴らしい道具です。使い方をしっかりと理解していきましょう!
山羊毛ブラシは仕上げに特化した柔らかいブラシ


『山羊毛ブラシ』ってどんなブラシなの?
『山羊毛のブラシ』は非常に柔らかい山羊の毛を使って作られたブラシの事です。
靴磨きでは主に次の三種類のブラシを使用して手入れを行います。
- 馬毛ブラシ
- 豚毛ブラシ
- 山羊毛ブラシ
それぞれ使用する動物の毛ごとに特徴が異なるので、ブラシごとの特徴や用途が異なります。

ブラシごとの特徴を簡単にまとめてみました!
毛の固さ | コシの強さ | 用途 | |
馬毛ブラシ | 柔らかい | 普通 | 汚れ落とし |
豚毛ブラシ | 固い | 強い | 靴クリームの浸透 革のマッサージ |
山羊毛ブラシ | 非常に柔らかい | 弱い | 仕上げ |
毛が固さが固ければ固いほどブラッシングを行った時に靴の表面に小傷をつけてしまいます。
毛のコシの強さが強いほど靴の表面に付着したクリームや汚れを払い落とす事ができます。

3つのブラシの中だと山羊毛ブラシが一番柔らかいブラシなんだね!
「山羊毛ブラシ」は馬毛ブラシや豚毛ブラシと比較すると、毛が細く柔らかいのが特徴です。

この柔らかさを活かして仕上げの磨きの時に使用されます。
鏡面磨きを行った後に馬毛ブラシや豚毛ブラシでブラッシングを行うと、鏡面に仕上げた部分に傷が入ってしまいます。
山羊毛ブラシでブラッシングを行うと、靴の表面にほとんど傷を付けずにブラッシングを行う事ができます。

鏡面磨きとはワックスを何層も薄く塗り重ねて磨く事で、鏡の様な強い光沢を出すテクニックの事です。
見た目が良くなるだけではなく、革靴の天敵である水濡れや傷から靴を保護する役割があります。
鏡面磨きをした後に山羊毛ブラシと数滴の水を使って靴全体を優しくブラッシングしてあげると、靴全体を統一感のある仕上がりに仕上げる事が出来るようになります。

代えの効かないブラシだから手に入れておきたい道具だね!
馬毛ブラシと豚毛ブラシとの役割の違い

馬毛ブラシと豚毛ブラシとの違いをもう少し詳しく解説します。
『馬毛ブラシ』は靴の手入れを行う際に一番最初に行う汚れ落としの工程で使用します。
革を傷つけない柔らかさと適度なコシがあるので、細かい部分に入り込んだ塵やホコリなどの汚れをキレイに掻き出す事ができます。

山羊毛ブラシではコシがないので、汚れを掻き出す事ができません。
靴を履いた後に表面に付着した汚れを落とすのは馬毛ブラシが最適と言えます。
『豚毛ブラシ』は靴クリームで栄養補給を行った後、余分なクリームを弾き落とす役割があります。
豚毛特有のコシの強さで余分なクリームを除去しながら、クリームの浸透を助ける働きがあります。

靴クリームは粘度が高いからこんな事が出来るのは豚毛ブラシだけだよね!
山羊毛ブラシはワックスを塗って艶を出した後に使用します。
コシのある馬毛ブラシや豚毛ブラシでは、ワックスで光沢を出した部分を引っ掻いて傷をつけてしまいます。
毛が柔らかくコシの弱い山羊毛ブラシを使う事で、ワックスを塗った部分を傷つけることなくブラッシングする事ができます。

柔らかい山羊毛でも多少の傷はつきます。
山羊毛ブラシを使った後は布で優しく仕上げましょう。
山羊毛ブラシの3つの使い方

大前提として山羊毛ブラシを使う時には毛先に水を含ませてからブラッシングするようにしましょう。
使う水の量は2~3滴で充分です。
手のひらに水をのせてブラシを軽く走らせましょう。

水を含ませる事で、より優しくブラッシングする事ができます。
豚毛ブラシは靴クリームを押し込む様に力を入れてブラッシングしますが、山羊毛ブラシは反対に極力力を入れずに優しくブラッシングを行います。
靴の表面を優しく撫でるくらいの感覚でOK。

力を入れない事がポイントです!
次に山羊毛ブラシはどんな目的で使用するのか見て行きましょう。
山羊毛ブラシを使う目的は主に次の3つの理由が挙げられます。
順番に解説していきます。
鏡面部分のホコリ落とし

鏡面磨きをした靴のつま先など、光沢を出した部分のブラッシングする時に重宝します。

あれ?
汚れ落としは馬毛ブラシでやるんじゃないの?
細かいパーツとパーツの間やつなぎ目部分は馬毛ブラシでブラッシングをします。
しかし、鏡面に仕上げた部分に馬毛ブラシを使ってしまうとあっというまに傷だらけになってしまいます。
鏡面部分の表面に付着した汚れを落とす時に山羊毛ブラシを使用します。

山羊毛ブラシを使う事で、鏡面を傷つけることなく汚れを払い落す事ができます!
細かい部分の汚れは馬毛ブラシを使い、目立つ鏡面部分は山羊毛ブラシを使って2種類のブラシを使い分ける事で靴を綺麗に保ちつつ汚れを除去する事ができます。
鏡面部分の傷消し

大きな傷を消す事はできませんが、小さな小傷や擦り傷程度だったら山羊毛ブラシでブラッシングする事である程度目立たなくさせる事ができます。

綺麗に磨いても知らない間に傷が付いちゃうんだよね・・・。

そんな時は少しだけ力を入れて山羊毛ブラシでブラッシングしましょう。
力を入れてブラッシングをすると表面のワックスを動かし馴染ませる事ができるので、傷が目立たなくなります。
鏡面磨きをやり直すと時間がかかってしまうので、ちょっとした日頃の傷ならこの方法で対処可能です。
艶を塗り広げて靴全体に統一感を出す

山羊毛ブラシでブラッシングをすると鏡面部分がさらに深い艶が出ると考えている方が多く、この勘違いが影響して使ってみても思っていたような艶が出ないという意見が挙がるのだと思います。

山羊毛ブラシでブラッシングをする時のポイントは鏡面に仕上げていない部分を重点的にブラッシングをする事です。
磨くポイントは鏡面磨きをした境目の部分や黄枠で囲った履きジワの部分です。

つま先部分は鏡面に仕上がっていますが履きジワの部分はワックスを塗っていません。
『磨いている部分』と『磨いていない部分』のが極端になっていて、靴全体に統一感がなくなってしまいます。

つま先部分だけピカピカだと、そこだけ別の素材みたいになって一体感がないよね。

側面部分に関してもサイドの下の方や、踵部分は鏡面に磨かれていますが黄枠で囲った部分は艶がなくちぐはぐな印象に仕上がりになっています。

そういった部分をブラッシングをしてワックスを塗り広げると、ほんのりと艶が出て全体的に統一感のある仕上がりになるよ。


鏡面磨きに仕上げた部分の境界の部分を入念にブラッシングする事で、境界線がぼけてより自然な仕上がりにする事ができます。
- 使う時は磨く部分に水を2,3滴のせて優しくブラッシング
- 使う目的は深い艶を出す事ではなく、全体に艶を広げる事
- 鏡面磨きの境界部分、履きジワの部分を入念にブラッシング
長く使うなら手植えの山羊毛ブラシがおすすめ

山羊毛ブラシは馬毛や豚毛のブラシと比較して高価な事でも有名です。
馬毛ブラシや豚毛ブラシは1,000円以下で購入する事も可能ですが、山羊毛ブラシの場合は最低でも3,000円ほどします。

山羊毛は繊細な毛なので機械植えが難しく、機械で作られたブラシは毛の抜け落ちが激しいです。
職人が1つ1つ山羊毛を選別して手作業で作る「手植え」のブラシの方が、抜け毛が少ないと言われています。
しかし、機械植えよりも人件費がかかるので手植えのブラシは高額になってしまいます。

手植えの山羊毛ブラシは1万円を超える商品も多いもんね・・・。
写真の山羊毛ブラシは私が2016年から愛用しているものです。
このブラシは機械植えのものですが、使っていて未だに抜け毛が目立ちます。

せっかく育てた山羊毛ブラシも毛が抜け続けて毛量が減ってしまったら、今までの努力が水の泡になってしまいます。

なので、山羊毛ブラシを購入するならコストはかかりますが手植えのブラシがおすすめです。
山羊毛ブラシは『育てる』と真価を発揮する

山羊毛ブラシを使うと逆に「綺麗に仕上げた部分に小傷が入った」、「綺麗に艶が出ていたのに曇ってしまった」という意見もよく目にします。

・・・それはどうしてなの?

それは、育つ前の新品の状態で山羊毛ブラシを使っているからです。
豚毛ブラシも同じように使い続けるとクリームの成分が毛先に残り、簡単に艶を出す事が出来るようになります。
雑誌やブログなどで「山羊毛でブラッシングをするだけで艶が出る」と紹介されているのは、使用されている方が使い込んだブラシを使用しているから。

新品のブラシで同じ事をするのは難しいです。
新品の山羊毛ブラシで同じ事を行うと、艶を出すどころか毛先で仕上げた部分のワックスを削ってしまうのでブラッシングを行うと小傷ができてしまいます。
なので、何度も繰り返しブラッシングをして山羊毛の毛先にワックスを浸透させる必要があります。

じゃあ、最初のうちは山羊毛ブラシを使ったら傷だらけの状態で我慢して履かないとって事?

山羊毛ブラシを育てている間はつま先部分に使うのは避けて、サイドや踵の部分など目立たない部分をブラッシングする様にしましょう!
つま先部分の小傷は目立ってしまうので小傷が目立ちにくいサイドと踵の鏡面磨きに仕上げた部分をブラッシングして少しずつブラシを育てていきましょう。
自分は練習用の靴を用意して、その靴にワックスを塗ってひたすらブラッシングをしていました。
- 新品の山羊毛ブラシは育っていないので逆に傷をつけてしまう
- 最初のうちは小傷が目立たないサイド・踵をブラッシングしてブラシを育てる
大きな傷を消す事はできませんが、小さな小傷や擦り傷程度だったら山羊毛ブラシでブラッシングする事である程度目立たなくさせる事ができます。
山羊毛ブラシは不要?使っても効果が分かりにくい

山羊毛ブラシについて調べていると「山羊毛ブラシは必要ない」という意見を目にします。
これについては主に次の理由が挙げられます。
- 効果が実感しづらい
- 初心者には必要ない
山羊毛ブラシを使う目的は鏡面磨きの境界部分をぼかしたり、ワックスを靴全体に塗り広げたりなど馬毛ブラシや豚毛ブラシと比べて効果が実感しづらいです。

雰囲気で違いが分かるくらいの印象で、感覚的な部分が大きいです。
なので、あったら便利な道具なのですが、無くても問題ないというのが本音です。
山羊毛ブラシは他のブラシと比べても価格が高いので、靴磨きを始める際に必要な道具の中から外れている事が多いです。
また、山羊毛ブラシを使うのはワックスを使った仕上げを前提としています。

靴磨きを始めたばっかりだと、鏡面磨きは難しくてなかなか手を出せないもんね。
ワックスを使わなくても蝋分の多い靴クリームで充分綺麗に仕上げる事ができます。
靴クリームだけなら豚毛ブラシでブラッシングを行えばいいので、無理に山羊毛ブラシを使う必要はありません。
以上の理由から山羊毛ブラシは不要という意見があるのだと考えられます。

ただ、予算に余裕があればチャレンジしてほしい道具です!
山羊毛ブラシを使うタイミング

山羊毛ブラシを使うタイミングを紹介します。まずは全体の流れを確認しましょう。
- 馬毛ブラシでブラッシング
- クリーナーで汚れ落とし
- 靴クリームで栄養補給
- 豚毛ブラシでブラッシング
- 布で余分なクリームを拭き取る
- ワックスで鏡面に仕上げる
- 山羊毛ブラシでブラッシング
- 水研ぎ
- ソールの手入れ
山羊毛ブラシを使うタイミングはワックスで磨いた後の⑦のタイミングで行いましょう。
一番最後に行うイメージが強いですが、水研ぎの後に行うと小傷がついてしまいます。

水研ぎを行う前にブラッシングするように覚えておきましょう。
山羊毛ブラシのおすすめは?

次に山羊毛ブラシのおすすめ商品を紹介させて頂きます。
コロニル1909 ファインポリッシングブラシ
自分が最初に購入したブラシですが、非常に柔らかく毛量も多いので最初の1本には最適のブラシだと感じています。
値段も他の山羊毛ブラシと比較してみても非常に安価なので「山羊毛ブラシがどんなものか試してみたい」という方におすすめです。
有名ブランドが販売するブラシが欲しい
お手頃な価格で山羊毛ブラシを購入したい
BootBlack×熊野筆 フィニッシングブラシ
広島県安芸郡熊野町で伝統的な製法で作られたブラシです。
山羊毛と馬毛を1対1の割合で混ぜていて柔らかさの中にもコシがあり、非常に扱いやすいブラシです。

手植えで作られたブラシなので、毛が抜け落ちにくいのもポイントです!
最高品質のブラシを使ってみたい方
【M.MOWBRAY】プロ・ゴートブラシ
シューケアグッズの老舗ブランド、「M.MOWBRAY(エムモゥブレイ)」が販売する山羊毛ブラシ。
3,000円台で購入できるので、山羊毛ブラシの中ではコスパに優れています。
持ち手部分が18cmと大きく、一度に広い範囲をブラッシングできる点も魅力です。

レビューを見ても、高評価が多いです!
価格は抑えながら、しっかりとした品質のブラシであるのが分かります。
コスパを重視したい方
山羊毛ブラシについてよくある質問

山羊毛ブラシについてよくある質問についてまとめてみました。

ここまでの内容の復習もかねてチェックしてみてね!
Q1. 山羊毛ブラシは靴の色ごとに揃えるの?
山羊毛ブラシは1本だけで大丈夫です。
豚毛ブラシは色付きのクリームを塗った後の革靴をブラッシングするので、色ごとに揃える必要があります。
しかし山羊毛ブラシを使うタイミングは仕上げの段階でブラシにクリームやワックスの色が移ってしまう事はないので1本あれば充分です。
Q2. 山羊毛ブラシは必ず買った方がいいの?
馬毛ブラシや豚毛ブラシとは違って山羊毛ブラシは必須のブラシではありません。
特に靴磨きを始めたばかりの方でワックスを少量しか使わなかったり、鏡面磨きを行わない方でしたら購入する必要はそこまでないと考えます。

あれば便利ですが、なくても問題ありません。
Q3. 山羊毛ブラシでブラッシングすると艶が増すの?
正確には靴全体に艶がのるので、強い艶が出るというよりも靴全体がじんわり光るというイメージです。
鏡面磨きをで仕上げた部分をブラッシングすると更に艶が増すという意見も見かけますが、ブラッシングをすると小傷が入り曇ってしまうので艶が増す事はありません。
まとめ
- ブラシの中で最も価格による差が出やすいブラシ。毛が抜けやすい
- ブラシが育っていないと逆に傷がついてしまう
- 水とセットで使う
- 使うタイミングは鏡面磨きをした後
- 重点的に磨くのは鏡面部分ではなく境目や履きジワの部分
扱いが難しく使用していない方も多い山羊毛ブラシですが、使いこなせれば靴の仕上げを一段階押し上げてくれる素晴らしいブラシです。
予算に余裕があれば是非、チャレンジしてみて下さい。