- シワ入れってどんな作業なの?
- シワ入れをやった方がいいの?
- 使う道具や手順が知りたい!
「シワ入れ」という言葉を聞いたことがありませんか?
靴に拘る方は歩いた時にできる「履きジワ」のシワの入り方にまで注意を払います。

でも、実際にはどんな事をしているのか?何に気をつければいいのか全然イメージがわきませんよね?
自分も初めてシワ入れの作業を知った時は何のために行っているのかが全く分かりませんでした。
今回のブログをご覧いただければ以下の事が分かります。
- シワ入れとは
- シワ入れの注意点
- 使う道具と手順
是非、最後までご覧ください。
『シワ入れ』 とは?


『シワ入れ』って聞いたことがあるけどどんな事をするの?
『シワ入れ』とは履きジワができるタイミングに細い棒などを当てる事によって自分の狙った位置に履きジワを作るテクニックの事を言います。
高級紳士靴を取り扱う店舗では、新品の靴を購入した時にお手伝いしてくれるところが多いです。
履きジワは歩行時に靴が足の形に合わせて曲がるので必ず入ってしまうもので避けて通る事はできません。

履きジワは甲の目立つ部分に入ってしまう為『革靴の表情の1つ』と言っても過言ではありません !

「革靴の表情の1つ」!?
だったら履きジワの入り方にもこだわりたいよね!
ただ、何も考えずに履きジワを入れてしまうと自分が思っている通りの履きジワを入れる事ができません。
それどころか次のような事も珍しくありません。
- 左足は水平にシワが入ったけど、右足は斜めに入ってしまった
- 左右でシワの数が違う
- 片足だけ変な場所にシワが入ってしまった
この様な事になってしまうのには、次のような原因が考えられます。
- 足の大きさが左右で違う
- 歩き方の癖
- 革の状態

僕も左右で足の大きさが違うって言われたなぁ。
こうしたちょっとした事でもシワの入り方に影響があるんだね。
『履きジワ』は一度入ってしまうと修正するのが非常に困難なので取り返しのつかない作業になります。
自分の目指す履きジワを自然に入れる事が難しいのでシワが入るタイミングに少し手を加えてあげる事で自分の理想通りのシワを入れる事ができます。

SNSなどでは『シワ入れの儀』と呼ばれる事もあります.
『シワ入れ』をする目的

シワ入れを行う目的は主に2つあります。
- 左右対称にシワを入れる
- 履き心地の向上
順番に解説していきます。
① 左右対称にシワを入れる
先ほど軽く触れましたがもう少し深く掘り下げていきます。

実際に自分の持っているシワ入れをした靴とシワ入れをしなかった靴を比較してみましょう!

- (左) 黒ストレートチップ シワ入れ無し
- (右) 茶セミグローブ シワ入れ有り
写真左側の黒のストレートチップの靴は購入する前に店内を試しに履いて歩かせて頂いた際に履きジワが入ったものでシワ入れは行っていません。

購入した頃は『シワ入れ』を知らなかったので今となっては非常に後悔しています・・・。
写真右側の茶色のセミグローブの靴はネットショップにて購入しました。
購入後、靴磨き専門店でプレメンテナンスを依頼してその際にシワ入れを手伝って頂きました。

見た感じそんなに違和感がないけど・・・ 。
そんなに違いがあるの?
それぞれの違いを見ていきましょう。
(黒)ストレートチップ
まずは、黒のストレートチップの靴の履きジワを見ていきましょう。

向かって左側は靴は「斜めに入った大きなシワ」と「水平に入った短いシワ」の2つシワ入っている事が分かると思います。

それぞれ長さも角度も違う・・・
一方で写真右側の靴を見ていきましょう。
右側の靴は「真ん中あたりに横に伸びたシワ」が1つだけ入っています。
大きなシワも1つだけで水平に入っているので比較的に綺麗なシワの入り方だと思います。
ただ、2つ靴を並べてみると左右のシワの入り方が非対称なのでバランスが悪く見えてしまいます。

シワの入り方もシンメトリーになっている方が美しく見えます。
片足のシワが綺麗に入っていても、もう片方のシワの入り方が悪いとそれだけでバランスが悪く映ってしまいますね。
(茶)セミグローブ
次に茶色のセミグローブの状態を見ていきましょう。

こちらの靴はシワ入れを行った靴です。
靴は左側・右側の靴共に「中央部分に水平なシワ」が入っていて比べてみても両足で大きな違いが無い事が分かりますね。
他の部分にも大きなシワが入っておらず綺麗なシワの入り方をしていると思います。

黒のストレートチップと比べてみても、左右のバランスが良く美しく見えますね!

こうやって見比べてみると『シワ入れ』をした靴と、していない靴だと見た目に大きな差があるのが分かるね!
このように「履き下ろすタイミングでちょっとだけ手を加えるだけ」でこんなにも見た目で差ができてしまいます。
特に革靴はきちんと手入れを行えば10年以上履き続ける事ができる物なので見た目を大きく左右するシワ入れは非常に重要な作業だと思います。
②履き心地の向上

履き心地の向上と言うと大袈裟かもしれません。
しかし、変な位置に履きジワが入ってしまうと歩く度にシワが足に当たってしまい違和感を感じる事があります。

中古で購入した靴や新品でも履きジワが入っている靴を購入する時には注意が必要です。
以前の持ち主や試着された方がつけた履きジワが入ってしまっている靴は「その人の足に合った履きジワ」が入ってしまっているのでより履いた時に違和感を感じるかもしれません。
中古靴を購入する際には革の状態だけではなく実際に履いてみて「シワの入り方」や「歩いてみて違和感がないか?」という点も入念にチェックする事をおすすめします。
シワ入れを行う事で自分で狙った部分に意図的にシワを入れられるのでこのようなトラブルを未然に防ぐ事ができ、結果として履き心地を損なう事がなくなります。

自分で足を通してシワを入れるからそこまで大きな問題はないかと思うけど用心するに越したことはないね!
話が少し逸れますが、靴を試着する時には履きジワをつけないように注意しましょう。
自分達が試着をした時に店内を歩いてみたり、踵を上げたりすると新品の靴に履きジワが入ってしまいます。
お店側からすると新品の靴にシワが入ってしまうと新品として商品を販売する事ができなくなってしまう事もあるそうです。

新品で買った靴なのに誰かが履いた跡があるのは嫌だよね・・・

こうした事は購入する前提の靴や、店員の方に許可を取ってからにしましょう!
シワ入れの注意点

シワ入れを行う時に注意する事が3つあります。
- 『プレメンテナンス』を行う
- 靴紐をしっかり結ぶ
- 片足ずつ行う
順番に解説していきます。
① プレメンテナンスを行う
1つ目は『プレメンテナンスを行ってからシワ入れを行う』という事です。
プレメンテナンスとは靴を購入したタイミングで一番最初に行うメンテナンスの事です。

「新品の靴は手入れをしなくても大丈夫!」と考えていませんか?
しかし、自分の手元に来る前はどんな状態だったのかこちらでは判断する事ができません。
- 手入れされた後に出荷されている
- 展示品として店頭に並んでいた
- 長期間倉庫に保管されていた
- 製造されてからすぐに自分の手元に届いている
などなど、自分が購入した靴の保管状況としてはどれも考えられますね。
特に長い間手入れがされておらず乾燥しきった状態の靴が手元に来る事も・・・。
その状態でプレメンテナンスを行わずにシワ入れを行ってしまうとそのままクラック(ひび割れ)が入ってしまう事も考えられます。

新品の靴がそんな事になっちゃったら笑えない・・・。
購入した靴はきちんとプレメンテナンスを行い「栄養」と「潤い」を補給した状態でシワ入れを行うようにしましょう。
プレメンテナンスの方法についてはこちらのブログをご覧ください。
② 靴紐をしっかり結ぶ
2つ目は靴紐を『しっかりと結んだ状態でシワ入れを行う』という事です。

靴紐を締めずにシワ入れを行うとどうなるの
シワ入れを行う目的は 『歩行時にできる履きジワの位置を自分の理想の位置』 に入れる事でしたよね?
なので、シワ入れを行う場合は靴の状態も歩行時と同じく靴紐を結んだ状態にしておく必要があります。
靴紐を結ばずに踵を持ち上げてしまうと靴紐の穴を通している『レースステイ』というパーツが開いてしまいます。

すると、靴紐を結んだ状態で履きジワが入る部分とは別の場所に履きシワが入ってしまう可能性があります。

特に『プレメンテナンス』はシュータンの手入れを行った時に靴紐を外します。
その流れでシワ入れを行うと靴紐を通し忘れてしまうという事が多々あるので注意しましょう!
普段履く時と同じ状態にしてシワを入れなければシワの位置も若干変わってしまうので見落とさないように気をつけましょう。

③ 片足ずつ行う
3つ目に注意しなければならないのが『シワ入れは片足ずつ行う』という事です。
シワ入れは体を前にかがめたり、前後左右に揺さぶったりするので意外と体を大きく動かします。
なので、以下の手順で作業を進める事をおすすめします。
- 片足に足を入れて靴紐を結ぶ
- シワ入れを行う
- 靴を脱ぐ
- 反対の足を入れて①~③を繰り返す

ちょっとだけ面倒だけど不意なトラブルを防ぐ為に我慢しよう!
シワ入れを実践!
最後に実際にシワ入れを行ってみましょう。
今回はショーンハイトの『ダブルモンクストラップ』の靴のシワ入れを行います。

次にシワ入れに使う道具を紹介します。
今回は『油性マジック』を使用しました。

自分は油性マジックを使用しましたが以下の条件を満たしていれば基本的になんでも大丈夫です。
- 細長い筒状のもの
- ある程度の固さがあるもの
ボールペンや万年筆、ドライバーなどでも使う事が出来ます。

「線引き」でやっている人も見た事があるよ!
自分の使いやすいもので作業するようにしよう!
① シワを入れる部分を決める
まず最初に足を靴に入れてシワを入れたい部分を決めましょう。
シワ入れに関して自分は次の事に気をつけて行っています。
- シワの角度を揃える
- シワの数を揃える
- シワの位置を揃える
シワの数や角度については履く方の好みや靴のモデル、素材によっても変わってくるので特に正解はないと思います。

とにかく左右で対象になるように心がけましょう!
足の指の付け根部分が歩行する時に曲がる部分になるのでそこにシワが入るようにします。
並行~少し傾けるくらいの角度で当てるようにします。


足の付け根部分が分からない場合はシワが付かない程度に踵を持ち上げましょう。
靴が軽く変形するので曲がる部分を目安にすると分かりやすいです
② ペンを当てて足を上げる

シワを入れる部分が決まったらペンをシワを入れたい部分に当てて少しずつ踵を持ち上げていきます。
一回でシワを入れようとすると予想外のところにシワが入ったり、勢いをつけた衝撃でペンの位置がズレてしまい狙った位置にシワが入らない可能性があります。
シワを入れる時は焦らずに以下の事に気をつけてシワを入れていきましょう。
- シワを入れる時は少しずつ踵を上げていき何回かに分けてシワを入れていく
- 踵を上げてしっかりシワが入ったらペンを当てた状態で前後左右に体を動かす
- 最後にペンを外した状態でシワを入れる

焦らずゆっくりとね!
こちらがシワ入れが完了したものになります。

狙った位置にしっかりとシワを入れる事ができました。

シワ入れは失敗ができないので非常に気を遣う作業になりますが、一度シワを入れてしまえば後はそれっきりなのでおすすめです。
自分も履きジワの事を意識する様になってから綺麗な履きジワが入っている靴を見ると思わず目に留まってしまいます。
靴好きな方と話しをする中で 『シワの入り方に拘っている』 という方が非常に多いという印象を受けました。
履くおろす時にのちょっとしたひと手間を加えるだけで簡単に靴の見た目をワンランクアップさせる事ができます。

逆に言えば最初の『シワ入れ』さえ頑張っちゃえばずっと見た目のいい靴が履けるって事だね!
履き終わったら必ず 『シューキーパー』
せっかく綺麗なシワを入れても履いた後に何もせずにそのまま放置しておくと乾燥により履きジワ部分の革が固くなり、深いシワが入ってしまいます。

つま先部分が上を向いてしまい 『くの字』 のように曲がってしまいます。
履きジワ部分の革が固くなると次のようなデメリットがあります。
- 履き心地が悪くなる
- 見た目が悪い
- 履きジワ部分がひび割れる
履きジワ部分が『くの字』で固まったまま履くと、歩いた時に甲の部分が伸び辛く非常に歩きづらくなります。
自分は普通に歩いているつもりでも靴の先端が少し上に向いているので思わぬ場所でつまづいてしまう事も。

つま先が上の方を向いている靴って、見た目もカッコいいとは言えないよね。
それ以上に問題なのが『履きジワ部分に負担がかかる事』です。
履きジワは歩行する度に伸び縮みを繰り返すので靴の中でも負担が大きい部分です。
その部分の革が乾燥して固くなっていると更に負担が大きくなり「クラック(ひび割れ)」が入りやすくなります。

対策として履き終わった後に『シューキーパー』を入れましょう!
「シューキーパー」とは足の形をした木型の事で、これを自分が靴を履いていない時に靴の中に入れておく事で甲の部分を伸ばす事ができ深いシワが入ってしまうのを防ぐ事ができます。
靴を履き終わった後に簡単なケアをして入れておくようにしましょう。
すでに深いシワが入ってしまっている場合は「ミンクオイル」がおすすめです。
油分が多いクリームなので使いすぎると型崩れの原因になってしまうのですが、それだけ革を柔らかくする効果が期待できます。

固くなっちゃった革も柔らかくしてくれそうだね!
まとめ
- シワ入れの目的は見た目と履き心地の向上
- 使う道具はペンのみ
- 一回でシワを入れようとするのではなく少しずつ入れるイメージ
たかが靴のシワと思われるかもしれませんが、自分が想像している以上に気にされていたり見ている方が多いのが履きジワです。
ちょっとした努力で靴の印象を良くできるならやらない手はないですよね?新しく靴を購入した際にはシワ入れの作業も取り入れてみて下さい。