- 靴クリームの『油性』と『乳化性』って何?
- ただ靴に塗るだけでいいの?
- おすすめの靴クリームがあったら教えてほしい!
靴の手入れと言われて真っ先に思い浮かべるのが『靴クリーム』ではないでしょうか?
「靴の手入れは靴クリームを塗っておけばOK」と考えている方も多いです。
しかし、靴クリームの特徴を正しく理解して使用しないとクリームの性能を発揮する事ができず逆に靴に負担をかけてしまったり靴トラブルの原因に繋がってしまいます。

自分も靴の手入れを始めた頃はクリームを塗り重ねるだけで、ちゃんとした手入れが出来ていませんでした。
今回のブログでは靴クリームの使い方や特徴について詳しく解説していきます。
このブログをご覧いただければ次の内容をご理解頂けます。
- 靴クリームの特徴
- 靴クリームの使い方&注意点
- おすすめの靴クリーム
画像付きで分かりやすく解説していきます。
これから靴磨きにチャレンジしたい・靴クリームについて詳しく知りたいという方は是非、最後までお付き合いください。
靴クリームって何?靴クリームの役割


靴クリームってどんな道具なの?
靴クリームは革靴に栄養を補給する為のシューケアグッズの事です。
革靴は牛や馬、爬虫類などの動物の革を使って作られています。
生きている間は食事や水分を取る事で自ら栄養を補給する事ができるのですが革だけの状態ではそれができません。

なので、私たちが靴クリーム等で栄養を与えてあげる必要があります。
人間の肌も手入れをしなかったり食事をしなければ乾燥や栄養失調などで肌にトラブルを抱えてしまいますが革靴にも同じ事が言えます。
栄養が足りていないと次のようなトラブルに直結します。
- ひび割れ
- シミ
革靴は履き込んでいく内に徐々に『水分』と『油分』が抜けていきます。
水分と油分が抜けてしまうと革のしなやかさが失われて固くなってしまいます。
固い状態の靴を履くと履き心地が悪くなるだけではなく、履きジワ部分からひびが入ってしまい修理が必要になります。

最悪の場合は履き続ける事が出来なくなっちゃう事も・・・。
ほとんど手入れをしておらず乾燥している状態の革に油分の入ったクリームを使うと、一気に油分が浸透してしまうのでその部分だけ周りと色が違いシミになってしまします。

そのような事にならない為にも定期的に靴クリームを塗っていきましょう。
栄養補給のイメージが強い靴クリームですが、他にも革靴を美しく保つ為の役割があります。
- 補色
- 艶出し
靴クリームは靴に近い色のクリームを使う事で『革靴に色をのせる』効果があります。
中には70色を超えるカラーバリエーションが展開されている商品も。
靴とクリームの色を揃える事で靴をぶつけて色が剥げてしまった部分を補色をしたりクリームの色を入れて自分好みの風合いに育てるといった楽しみ方をする事もできます。

『染料』と『顔料』によって色の付き方が異なります。
その点については後述しますね。
靴クリームはメーカーや種類によって原料や配合量が異なりますが主に次の成分で構成されています。
- 油脂
- 蝋分
- 有機溶剤
『油脂(ゆし)』は革に栄養を与える成分の事で、『蠟分(ろうぶん)』は艶を出す効果があります。
『油脂』と『蝋分』を『有機溶剤』が溶かして1つにする事でクリームにまとめています。

靴クリームのラベルを見てみると書いてあるよ!

靴クリームに含まれる蝋分の働きでクリームを塗ってブラッシングするだけで靴に綺麗な艶が出ます。
革靴は見た目にもこだわりたい物なので、栄養補給と艶出しをまとめてこなせる靴クリームは革靴の手入れの為に開発された商品だと言えます。
靴クリームの『油性』と『乳化性』って何?

靴クリームは大きく分けて『乳化性クリーム』と『油性クリーム』の2種類に分けられます。
2つのクリームの違いは『水分を含んでいるかどうか?』という点です。
水分を含んでいるかどうかで靴クリームの特徴がどのように変わるのか簡単にまとめてみました。
特徴 | どんな人向け? | |
乳化性クリーム | クリームの伸びがいい 価格が安い | 初心者向け |
油性クリーム | 強い艶が出る | 中~上級者向け |
乳化性クリームは水分を含んでいるので油性クリームと比べると伸びが良く塗り広げやすいです。
伸びがいいとクリームを靴に乗せ過ぎてしまった時も全体に塗り広げて調整する事ができ、塗りムラになりにくいので失敗しづらい初心者の方におすすめのクリームです。

『扱いやすい』と表現される事もありますね!
一方の油性クリームは水分を含まない分、乳化性クリームよりも「油脂」や「蝋分」の配合量が多くなるのでより強い艶を出す事ができます。
簡単に強い艶が出せるのでワックスを使わずに油性クリームだけでも十分という方もいます。
水分が含まれていないので伸びが悪く扱いが難しいので中~上級者向けのクリームとされています。
乳化性クリーム ・・・伸びが良く使いやすい初心者向けクリーム
油性クリーム ・・・強い艶が出る中~上級者向けクリーム

この2種類のクリームの他によく革靴の手入れに使用されるものが『デリケートクリーム』です。
『デリケートクリーム』とは靴クリームよりも油脂やロウ分が少ない代わりに水分を豊富に含んでいる潤いの補給に特化したクリームの事です。
代表的な商品はM.モゥブレィのデリケートクリームです。

蝋分が含まれておらず、有機溶剤の配合量も少ないので乾燥した靴や状態の悪い靴の手入れの際に使用しましょう。

単体で使用するのではなく靴クリームとの併用がおすすめです!
靴クリームを塗る前にデリケートクリームを塗っておく事でより靴の状態を良くする事ができます。
デリケートクリームの使い方や特徴についてはこちらのブログで詳しく紹介しておりますので併せてご覧ください。
> 【靴磨き】デリケートクリームのおすすめは?靴クリームとの違いを徹底解説
靴クリームの『染料ベース』と『顔料ベース』とは?

『乳化性クリーム』と『油性クリーム』の違いについて解説させて頂きましたが、靴クリームはもう1つ押さえておきたい違いがあります。
それは『染料ベース』と『顔料ベース』の違いです。
『染料』と『顔料』は物に色を着色する為の物質の事で身近なものだと衣類を染めたりプリンターに使用されています。

食料品の着色にも使用されています!
『染料』と『顔料』の大きな違いは粒子が革の表面に残るか浸透するかという点です。

顔料は革の表面に色の粒子が残るのでクリームの色を、革の表面に綺麗に表現する事ができます。

染料は革の繊維に染み込んで着色するので革の表情を残しつつ、使い続けていく事でクリームの色に染めていく事ができます。
ただし、靴クリームが『顔料ベース』、『染料ベース』のどちらなのかは商品のラベル等に記載されていません。

その商品について紹介されているページや企業のHP等でチェックする必要があります!
Amazon等の商品説明で記載されている事もあるよ!
『染料』と『顔料』の事をより詳しく知りたい方はこちらのブログも併せてチェックしてみて下さい。
> 染料と顔料の違いは?革靴用クリームの特徴や注意点を徹底解説!
靴クリームはどんなタイミングで使う?


靴クリームの特徴は分かったけど、靴クリームはどんな手入れの時に使えばいいの?
靴クリームを使った手入れは次の2つが挙げられます。
- プレメンテナンス
- フルメンテナンス
『プレメンテナンス』は靴を購入してから履き下ろす前に行う手入れの事です。

「プレメンテ」と紹介される事もあります。
新品で購入した靴は特に手入れをする必要がないと思われがちですが、靴が定期的に手入れされていたのか全く手入れされずに長期間保管されていたのか私たちが判断するのは難しいです。

履き下ろしたら靴が乾燥していてひび割れちゃったって事もあるみたいだよ・・・。
靴トラブルを未然に防ぐ為にも『プレメンテナンス』は大切な作業で、栄養補給を行う為に靴クリームを使用します。
『フルメンテナンス』は汚れ落としからワックスを使った磨きまでを行う手入れの事。

靴磨きで皆様がイメージする手入れがフルメンテナンスだと思います。
フルメンテナンスの時に靴クリームを使って栄養補給を行う事で革靴を最高の状態で履く事ができます。
> 【靴磨き】初心者必見!革靴の手入れに必要な道具&やり方を徹底解説!

毎日履き終わった後とか毎週末に塗った方がいいんじゃないの?
靴クリームは1度塗れば効果がしばらく持続するので頻繁に塗る必要はありません。
使用頻度にもよりますが、靴クリームを毎週塗るのは多すぎます。
靴クリームは汚れ落としをしてから使用するので毎週手入れを行うという事は毎週クリーナーで汚れを落とす事になります。

クリーナーは溶剤を多く含んでいるので使うと革の負担になります。
極力使いたくないですね。
靴クリームの効果が続いている状態で新たなクリームを塗ると、栄養補給を行うメリットよりもクリーナーによる革への負担増というデメリットの方が大きくなります。

お気に入りの靴だから手入れをしたくなる気持ちも分かるけど、適度に期間を空けるのも重要なんだね!
靴クリームの塗り方

次に靴クリームの塗り方を紹介していきます。
靴クリームを塗る方法 3選
靴クリームを塗る方法は主に3つあります。
- 指で直接塗る
- 布を指に巻いて塗る
- ペネトレイトブラシを使用して塗る
最もメジャーなのが『指で直接クリームを塗る』方法です。

靴磨きをされている方の多くは直接指で靴にクリームを塗り込んでいきます。
指で直接塗り込むメリットは指の体温でクリームが温められて成分が浸透しやすくなる事。
靴クリームによっては指で塗り込む事を推奨している商品もあります。

慣れてくると靴クリームを塗って指先の感覚で革の状態が分かるように
なるみたいだよ!
デメリットは靴クリームに直接触れるので指が汚れてしまう事です。
2つ目の方法が『布を指に巻いて塗る』事です。
指を汚さずに塗る事ができ、指で直接塗るのに近い感覚で塗る事ができます。
ただ、布がクリームを吸ってしまうので靴クリームの消費する量が多くなってしまい布も毎回使い捨てになるので余分にコストがかかってしまします。
3つ目が『ペネトレイトブラシを使用して塗る』方法。
ペネトレイトブラシと呼ばれる靴クリームを塗る専用のブラシを使用して塗り込みます。
毛先にコシの強い豚毛を使用しているので指先では届きにくい部分にもしっかりと塗り込む事ができます。
クリームに直接触れないので指先が汚れない点もおすすめです。

ペネトレイトブラシを使っているって人も多いよね!
ペネトレイトブラシは靴クリームを直接乗せるブラシなので毛先にクリームの色が残ってしまいます。
色付きのクリームが毛先についた状態で他の色のクリームに使うと色が混ざってしまうのでクリームの色ごとにブラシを揃える必要があります。

自分に合った方法でクリームを塗っていきましょう。
靴クリームの塗り方
靴クリームは一度にたくさん取って塗り広げるのではなく少量ずつ取って足りなくなったらその都度補充するようにしましょう。
靴クリームを大量に使っても後々拭き取る事になるので無駄遣いに繋がります。
また、大量にのせてしまうと均等に塗り広げるのが難しくなり塗り広げている間にクリームが浸透してしまうなど様々なデメリットが挙げられます。

靴クリームを1回にとる量の目安はコーヒー豆1粒分。

つけ過ぎてしまったら容器の縁を利用して余分なクリームは戻しましょう。
塗りこんでいくうちに少しづつ指先の滑りが悪くなってきます。

指先にのせたクリームが革に浸透している証拠だよ。
指先の滑りが悪くなったと感じたり、指先を確認してクリームが無くなっていたら補充の合図です。

クリームを革靴に塗っていくと徐々に車をワックスがけした時のような白い膜がでてきます。

靴クリームに含まれる蝋分が革の表面に残るのでこのようになります。
この膜が出てきたら水分と油分が革に吸収されたという事なので他の部分を塗っていきましょう!
靴の表面全体をこの膜で覆う事ができたら完成です。
クリームが塗り終わったら豚毛ブラシでブラッシング ⇒ 布で余分なクリームを拭き取っていきます。
塗り重ねはNG!古い靴クリームはしっかりと落とそう!

「靴の手入れは靴クリームを塗るだけでOk」と紹介されていますがあまりおすすめはできません。
理由は2つあります。
- 蝋分が蓄積される
- 新しいクリームの浸透を邪魔する
靴クリームには「油性」、「乳化性」に関わらず蝋分が含まれていると紹介させて頂きました。
蝋分は靴の表面に綺麗な艶を出す事ができますが、革の表面の毛穴を埋めてしまうというデメリットがあります。

革の通気性を確保するという点からも蝋分で表面をコーティングされた状態は好ましいものではありません。
クリーナーで毎回落としていれば問題ないのですが、塗り重ねていくと蝋分の層が厚くなり革に取ってはより通気性の悪い環境になってしまいます。
また、古いクリームを落とさないと前回塗ったクリームが新しく塗ったクリームの成分の浸透を邪魔する事になります。

化粧を落とさないでまたお化粧を上から重ねるようなものだもんね。
革に良くなさそうだね。
何も手入れをしないよりは靴クリームを塗り続けた方が革には良いのかもしれません。
しかし革の為にも新しく塗ったクリームの性能をちゃんと発揮させるためにも、クリーナーを使ってしっかりと前回の汚れを落とすようにしましょう。
おススメの靴クリームは?


靴クリームを探してみると色々なメーカーから出ていて、どれを買えばいいのか分からないよ~。

そんな方の為におすすめの靴クリームを『油性』とm『乳化性』でそれぞれ1つずつ紹介します。
- Boot Black SHOE CREAM (乳化性)
- サフィールノワール クレム1925(油性)
どちらの商品も取扱店舗が多くAmazonや楽天市場等でも購入する事ができます。
今回は2つに絞って紹介しますがこちらのブログではその他におすすめしたいクリームを紹介しています。
靴クリーム選びに迷っている方は参考にしてみて下さい。
Boot Black SHOE CREAM(乳化性クリーム)

靴磨き道具の老舗「コロンブス」のBoot Black(ブートブラック)シリーズの靴クリームです。

乳化性クリームはこれを買っておけばまず間違いありません。
値段もお手頃でカラーバリエーションも豊富。これから靴磨きを始める方にまず最初手に取ってほしい靴クリームです。
乳化性クリームなのでクリームの伸びが良くとても使いやすいです。
「通常ライン」の方がハイグレードラインとされていますが、どちらを選んで頂いても大きな差はないので価格の安い「シルバーライン」の方がおすすめです。
> Boot Black(ブートブラック)靴クリーム!シルバーラインとの違いは?
サフィールノワール クレム1925(油性クリーム)
油性クリームはサフィールノワールのクレム1925がおすすめです。

靴磨き好きなら使った事が無い人はいないんじゃないかってくらい人気のクリームだよね!
油性クリームでありながら乳化性クリームのような伸びの良さで、ギラっとした強い光沢を出す事ができます。
靴磨き専門店でも殆どの店舗で使われていて初心者から上級者までおすすめできるクリームです。

靴磨きの世界チャンピオンの長谷川裕也さんも手入れの際に使用されていますね!
靴磨き選手権でもファイナリスト全員が勝負クリームに挙げるなどプロも実力を認められています。
> 靴磨きの超定番クリーム『クレム1925』!使い方と特徴を徹底解説!
100均の靴クリームってどうなの?
最近はダイソーなどの100均でも「靴クリーム」や「ワックス」などのシューケアグッズが販売されています。

紹介しているブログもよく見かけるよね

気になったので自分もダイソーのワックスと靴クリームを購入して使用してみました!

靴クリームは液状の靴クリームで先端部分にスポンジがついていてそのまま塗り込むリキッドタイプのものでした。
靴クリームの成分は次の通り。
- ろう
- 油脂
- 染料
普段使用している靴クリームの成分とほぼ変わらない成分でした。
ですが、異様に光沢が強い事を考えると染料と蝋分が多く含まれていると考えられます。

栄養補給よりも光沢を出す事を重点に考えているのではないかと考えられます。

続いてワックスを見ていきましょう。
靴クリームと書いてありますがれっきとしたワックスです。
- ろう
- 油脂
- 有機溶剤
こちらも普段使用しているワックスと成分はほとんど変わりませんでした。
使ってみての感想は「使えない事はないけど有機溶剤の臭いが非常にキツイ」という印象を持ちました。

かなり溶剤の臭いが強いので有機溶剤が多く含まれていると感じました。
鏡面磨きを行ってみての感想は光らない事もないけど「光り方が鈍い」、「光るまでに時間がかかる」という印象でした。
結論としてはおすすめできる商品ではありませんが、コスパに関しては非常に高いので靴磨きの道具がどんなものなのか試してみたいという方がチャレンジしてみるのはアリかと思います。

靴クリームの他にも馬毛ブラシや豚毛ブラシ、グローブクロスなんかも揃える事ができるよ!
まとめ
今回は靴クリームについて紹介させて頂きました。
靴クリームは様々なメーカーから販売されているのでどのクリームを選べばいいのか迷ってしまいますね。

ですが、クリームの特徴を理解して自分の求める仕上がりを理解すればある程度絞る事ができます。
靴クリームは常に新しい商品が販売されています。
今後もおすすめの靴クリームが販売されたら随時紹介させて頂きますのでチェックしてみて下さい。