- スエード素材の靴の手入れが難しいって聞くけど本当なの?
- 普段の靴磨きで使う道具と同じ道具を使っていいの?
- 気をつけるポイントがあったら教えて!
靴の数が増えてくると持っている靴とは違う素材の物にチャレンジしてみたくなりますよね。
そんな時に候補に挙がってくるのが『スエード』、『ヌバック』のような起毛素材の靴ではないでしょうか?
これらの素材の靴は紳士靴コーナーで本革の靴と一緒に並んでいる事が多いので、目に触れる機会が多いと思います。
しかし、本革の靴と比べてみると見た目や質感が全く異なり「手入れが難しそう・・・」と考えてしまいなかなか購入に踏み切れない方が多いように感じます。
起毛素材の靴は、本革と比べて手入れがとても簡単です!
自分も当初は手入れが難しそうと考えて購入を控えておりましたが、購入してみたところあまりの手入れの簡単さに驚いたのを覚えています。
このブログをご覧いただければ次の内容をご理解頂けます。
- 起毛素材(スエード・ヌバック)の特徴
- 本革との手入れ方法の違い
- 手入れ方法 & 必要な道具
一見、難しそうに見える素材ですが手入れはとても簡単です。
その理由についても詳しく解説していきますので是非、最後までご覧ください。
起毛(スエード・ヌバック)とは?
「起毛素材」ってどんな素材なの?
起毛素材はなめした動物の革をサンドペーパーで削り革の表面を毛羽立たせる加工を施した素材の事で、その名の通り表面の毛が起きている革の事を指します。
革には『銀面』と『床面』があります。
- 銀面・・・革の表面
- 床面・・・革の裏面
その中で柔らかい子羊や子牛など、柔らかい革の床面を加工したものが『スエード』です。
「スエード」はフランス語が語源になっています!
毛を起こしているので独特の凹凸があり、本革の靴よりもふんわりとして柔らかく温かみのある風合いが特徴。
スエードを使用した素材の靴はグッとカジュアルに寄った印象になります。
スエード素材の靴を履いているとお洒落だなって思うよね!
反対に毛羽立たせているので、普通の革よりも靴の表面に汚れが吸着しやすいとされています。
手入れを繰り返し行う事で毛足にムラ感が出てきたり、補色スプレーを使用する事で簡単に色をのせる事ができるので靴の経年変化を感じやすい素材です。
- ヌバック・・・牛の表側
- スエード・・・豚、子牛、山羊の裏側
- ベロア ・・・牛の裏側
中でも、ヌバックとスエードを使った靴は本革と一緒に販売されている事が多く非常にメジャーな素材です。
革の表面を削って毛羽立たせた素材が「ヌバック」、革の裏面を削ったものが「スエード」と覚えておけばOKです。
ヌバックはティンバーランドのブーツに使われている事で有名ですね。
この2種類は細かな違いはありますが手入れ方法はほとんど変わりません。
スエードの靴と本革の靴の手入れは全く異なる
押さえておかなければならない事が、起毛素材の手入れ方法と本革の靴の手入れ方法は全く異なる点です。
それぞれの手入れ方法を比較してみましょう。
- クリーナーを使って汚れ落とし
- 靴クリームを塗って栄養補給
- ワックスで磨いて艶出し
本革の手入れ方法はクリーナーや馬毛のブラシを使用して汚れ落としを行い、靴クリームで靴の栄養の補給を行います。
その後、艶感を出す為にワックスを使用して仕上げます。
靴磨きって言われるとこのイメージだよね!
一方で、起毛素材の靴の手入れ方法を確認してみましょう。
- 専用のスエードブラシで汚れを掻き出す
- 頑固な汚れを消しゴム・やすりで削り取る
- スプレーで栄養補給・補色を行う
起毛素材の靴の手入れは本革で使用したような道具は使用せず、ワイヤー等の固い毛を使用した専用ブラシで毛の隙間に入り込んだ汚れを掻き出します。
その後、スエード素材用のスプレーによる栄養補給・補色で手入れが完了。
本革の靴とは異なりスエード靴はワックスは使用せずに仕上げます。
なんでスエード靴はワックスを使わないの?
ワックスでスエードの表面をコーティングしてしまうと、起毛させた革が寝てしまってのっぺりとした見た目になってしまいます。
起毛素材の特徴である柔らかい見た目も損なわれてしまうので、スエード靴の場合はワックスは使用せずに仕上げます。
この様に使用する道具から、手入れの工程まで全く異なります。
本革の靴は栄養補給をしつつ光沢を出して高級感を出す事、起毛の靴は栄養補給をしつつ素材の雰囲気を保つ事を目的として手入れを行います。
手入れする目的が全く違うんだね!
この様に本革の靴と比較すると異なる点が多く、必要な道具も全く違うので道具を集める必要があります。
これらの点が初心者の方が『起毛素材の靴の手入れが難しい』と、感じてしまう原因なのではないかと思います。
起毛(スエード・ヌバック)靴の手入れは簡単!
道具を揃える必要があるものの、それでも起毛素材の靴の購入をおすすめします!
理由は2つあります。
- 本革の靴よりも手入れが簡単
- 水濡れに強く、雨用の靴として使用できる
本革の靴よりも手入れが簡単
起毛素材の靴をおすすめする理由のひとつが「本革の靴よりも手入れが簡単」だからです。
革靴の手入れは汚れ落としから鏡面磨きまで行うと慣れていない場合、1時間以上メンテナンスに時間を要します。
- 馬毛ブラシでブラッシング
- クリーナーで汚れ落とし
- 靴クリームを塗る
- 豚毛ブラシでブラッシング
- 余分なクリームを拭き取る
- ワックスで磨く
- 山羊毛ブラシでブラッシング
- 水のみで磨く
特に「⑥ワックスで磨く」工程は時間がかかります。
一方の起毛素材の作業工程を見てみましょう。
- 馬毛ブラシでブラッシング
- スエードブラシでブラッシング
- 消しゴム・やすりを使用して頑固な汚れを落とす
- 栄養補給・補色
- 防水スプレー
一方で起毛素材のは2種類のブラシを使用するのでブラッシングに時間がかかりますが、他の工程はそれほど時間がかかるものがありません。
乾燥させる時間を除けば20分程度で仕上げる事ができます。
本革と違ってワックスを使った磨きが無いので、断然早く仕上げる事ができます。
また、本革と違って仕上がりに差が出にくいのもおすすめしたいポイントです。
水濡れに強く、雨用の靴として使用できる
起毛素材の靴は元々雨に強い素材ではないのですが、防水スプレーを使用する事で雨の中でも履けるようになります。
スエード素材の靴は『雨用の靴』としても人気が高いです。
雨用の靴として使用する際には雨に強い『ラバーソール』の物を履くようにしましょう。
起毛素材(スエード・ヌバック)の手入れ道具
本革とは使う道具が違うって言ってたけどどんな道具を使うの?
次に起毛素材の手入れの際に使用する道具を見てみましょう。
- 馬毛ブラシ
- スエードブラシ
- やすり #240
- スエードスプレー
- 防水スプレー
道具ごとの注意点や代替え案を含めて、詳しく解説します。
① 馬毛ブラシ
靴磨きの際に必須アイテム。
馬毛ブラシで表面に付着した塵やホコリ等の汚れを払い落とします。
素材ごと使い分ける必要はなく、本革用に使っているブラシを使えばOKです。
この後に紹介するスエードブラシでもブラッシングを行うので、馬毛ブラシは不要だという意見もあります。
個人的にはワイヤーブラシを使うと表面が荒れてしまうので、簡単な汚れは革の表面に負担の少ない馬毛ブラシの使用をおすすめしています。
② スエードブラシ
スエードブラシは寝てしまった毛を起こす事が目的なので、馬毛とは違い非常に固い金属の毛を使用しています。
価格は安いもので1,000円以下から高い物では3,000円以上の物と幅が広いです。
とにかく安く始めたいという方にはコロンブスの『スエードブラシC』がおすすめです。
毛の量や固さ・毛足の長さなど色々と物足りない部分がありますが、最低限の仕事はこなせて500円という価格は素晴らしいコスパです。
本格的なスエードブラシを使用したい場合にはコロンブスの『スエードブラシ』がおすすめです。
毛量が非常に多く0.08mmの極細ステンレスの毛を採用しているので、靴に優しく奥に入り込んだ汚れをしっかりと掻き出す事ができます。
毛足の長さも毛は長すぎるとしなってしまい汚れを掻き出せず、短すぎても上手く汚れを掻き出せません。
このブラシは起毛を起しやすい最適な20mmに設定されているので費用に使いやすいです。
私もこのブラシを愛用しています。
金属製の毛先が気になる方には「クレープブラシ」が選択肢に入ります。
毛の部分がゴムになっているので、靴を傷つける事なく毛の間の汚れを掻き出す事ができます。
ただしゴムなので使い続けているうちにゴムが劣化してしまうので、スエードブラシと違い定期的な交換が必要になります。
- 定番は「スエードブラシ」
- 固いブラシが気になる場合は「クレープブラシ」
③ やすり #240
2種類のブラシでブラッシングをしても落としきれなかった場合は、『やすり』を使って汚れを削り落とします。
乱暴に思うかもしれませんが、スエードブラシでブラッシングだけでは落としきれない汚れもあります。
その時にはやすりを使ってこすり落としましょう。
力を入れて擦ってしまうとその部分だけ色落ちしてしまうので、力の入れすぎには注意が必要です。
やすりがけが不安な方には、「クリーニングバー」がおすすめだよ!
ゴムのような柔らかい素材を使用しているので、スエードに付着した汚れを落とす事ができます。
やすりを使うよりも革への負担を抑える事が出来るので、まずはこちらから試してみて下さい。
④ 栄養補給・補色スプレー
スエードは栄養補給をする際、靴クリームではなくスプレーやミストを靴に吹きかけます。
クリームとは違い豚毛ブラシでブラッシングをしたり、布で拭き取ったりする必要がありません。
乾燥させる時間こそ必要ですが手入れは非常に簡単です。
自分は補色が必要な時と、必要でない時にスプレーを使い分けています。
補色が必要な場合はコロンブスの『スエードカラー シューケアスプレー』を使用しています。
栄養補給のみで大丈夫な場合は同じく、コロンブスの『レザーキュア ヌバック・スエード 栄養ミスト』のニュートラルを吹きかけています。
スエードの手入れはスプレーが主流なんだね!
スプレータイプの他にも直接塗り込むリキッドタイプのものもあります。
有名なのはファマコの『スエードカラーダイムリキッド』。
靴全体に塗るのはもちろんのこと、色落ちしてしまった部分にピンポイントに塗り込む時にもおすすめです。
キャップを外すと先端がスポンジになっているので、そのまま革に塗り込む事ができます。
一見簡単そうに思いますが直接塗り込んでいくのでムラができやすく中~上級者向けです。
補色スプレー等と併用する場合は、目立たないところで色の違いが無いか確かめてから使用するようにしましょう。
⑤ 防水スプレー
防水スプレーは吹きかけると水を弾くようになるので、スエード靴に必須の道具です。
防水スプレーを定期的に吹きかけておくことで汚れや水濡れに強くなり、雨用の靴として使用できるようになります。
LOCTITEの防水スプレーが量も多く価格も安いのでおすすめです。
防水スプレーには『フッ素タイプ』と『シリコンタイプ』がありますが、革靴に使用する場合には汎用性の高いフッ素タイプのものを選ぶようにしましょう。
【靴磨き】スエード靴の手入れ方法
次に起毛素材の手入れ方法について紹介させて頂きます。
手順は次の通り!
- 馬毛ブラシでブラッシング
- スエードブラシでブラッシング
- やすりがけ
- ライターで伸びた毛を炙る
- スエードスプレー
- 防水スプレー
- 馬毛ブラシでブラッシング
① 馬毛ブラシでブラッシング
最初に馬毛ブラシで全体をブラッシングしていきます。
まずは靴の表面に付着している大まかな汚れを払い落としましょう!
特にコバとソールの間の部分は汚れが入り込みやすいので、入念にブラッシングを行いましょう!
本革の靴は馬毛ブラシを使う時は、ブラシを前後に大きく動かして靴の表面に付着した汚れを払い落しました。
スエードの靴をブラッシングする時には、踵からつま先に向かってブラッシングする向きを揃えます。
毛の向きを揃えると周囲と色が違う部分が出てくる事があり、それが汚れです。
毛の向きがバラバラだと濃い部分と薄い部分がバラバラになってしまい汚れが目立たなくなりますが、毛並みを揃える事で汚れている部分を発見しやすくなります。
汚れが残ってしまった場合でも、次の工程で落とせるのでそのまま進みます!
② スエードブラシでブラッシング
次にスエードブラシを使用します。
目立つ汚れは「クリーニングバー」や「スエードブラシ」で落としましょう。
スエードブラシは馬毛ブラシの様に大きく動かしません。
- スエードブラシを靴に当てる
- 手首のスナップを利かせて毛を起こすようにブラッシング
と、いう作業を繰り返していきます。
スエードブラシは固さのあるブラシなので大きく動かしてしまうと革の表面を荒らす事になり、最悪の場合は傷が入ってしまいます。
ブラッシングをするというよりも、寝ている毛を起こすイメージで丁寧に作業していきましょう!
③ やすりがけ
スエードブラシでブラッシングしても汚れが落ちなかった部分は、やすりを使用して汚れを削り落としていきます。
私は普段『#240番手』のやすりを使用しています。
やすりがけで注意するポイントは2つあります。
- やすりを大きく動かさない
- 力を入れすぎない
この2つの事を意識しないで手入れをしてしまうと、表面部分を必要以上に削る事になってしまいその部分だけ色落ちしてしまいます。
使い方はスエードブラシでブラッシングをする時と同じです。
汚れている部分にやすりを当てたら手首のスナップを利かせて汚れをピンポイントに削り落とそう!
汚れが染み込んでいたり、削ってみても落とせなかった場合に無理して続けると靴にダメージを与えてしまうだけになります。
④ ライターで伸びた毛を炙る
この工程は省略してもOKです。
スエードブラシのような固いブラシで繰り返しブラッシングを行っていると、毛の長さにバラつきがでてきてしまう事があります。
そんな時に効果的な方法がスエードの表面をライターで軽く炙る事。
火で炙る事で長くなった毛を燃やし、毛足の長さが揃ってすっきりとした見た目になります。
ただし、ライターを使う際には注意点があります。
この後に紹介する栄養補給・補色用のスエードスプレーや、防水スプレーを屋内で使用した後にライターを使うとガス爆発を起こす危険があります。
実際、過去にそういった事故があったみたいだよ・・・。
ライターを使う時には必ず次の順番を守りましょう。
- ブラッシング
- ライター
- スプレー
不安な場合は屋外で作業をすればOKだよ!
靴の色によっては火で炙ると色が変わってしまい目立ってしまう場合があるので、目立ちにくいサイドや踵の部分で試してから全体に使用するようにして下さい。
炙る時にライターの火の真上に靴を持ってくると焦げてしまうので、炙る際には靴を斜めに傾けるように気をつけましょう。
同じ部分に火を当て続けても焦げてしまう可能性があるので、ライターの火は細かく動かして炙る位置をずらすのがポイントです!
④ スエードスプレー
スエードスプレーを使用する時には、靴から少し離れた位置から靴全体をスプレーのミストで包み込むように噴射する事がポイントです。
スエードスプレーを使用する時には、使用するスプレー缶の大きさの1.5本分くらい離した位置から噴射するようにしましょう。
容量の多い防水スプレーなどを目安にする場合は1本分離すようにしましょう。
靴に向かって噴射すると使った面にだけスプレーの成分が集中してしまします。
靴を狙って噴射するというよりも靴の少し上を狙って噴射し、ミストで包み込むようにすれば靴全体に満遍なくのせる事ができ色ムラを防ぐ事ができます。
靴の内側にもスプレーの成分が付着してしまうと、靴下にスプレーの色が移ってしまう可能性があります。
靴の内側に入り込まないようにマスキングを行って対策をしましょう!
新聞紙を靴の内側が見えなくなるように詰めておけばOKです。
履き口の部分は靴を履く時に擦れるので色落ちしやすい部分です。
スプレーを直接噴射すると内側に付着してしまう可能性があり非常に難しい位置になります。
こういった部分を補色する方法は2つあります。
- リキッドタイプの物を使用する
- スエードスプレーを布に塗布して塗る
1つ目が先ほど紹介したファマコの直接塗るリキッドタイプの物を使用する方法です。
色が落ちた部分に直接塗り込んでいくので靴の内側に付着してしまう事を防ぐ事ができます。
2つ目がスエードスプレーを布に噴射して塗料のついた部分で何度か叩くという方法です。
こちらの方法の方がリキッドタイプの物よりも自然に補色する事が可能です。
リキッドタイプとスエードスプレーは同じ色でも実際に塗ってみると色が微妙に違うという事があるのでこちらの方法をおすすめします。
⑤ 防水スプレー
防水スプレーもスエードスプレーと同様に靴全体をミストで包み込むように少し離れた位置から噴射します。
防水スプレーを使用する時にも靴の内側に付着させたくないのでスエードスプレーの時に行ったマスキングは外さずにそのままつけておきましょう。
風通しが良いところで5分ほど乾燥させます。
⑥ 馬毛ブラシでブラッシング
靴が乾燥したら最後にもう一度、毛並みを整える為に馬毛ブラシでブラッシングをします。
毛並みが整ったら作業は完了です。
まとめ
- 本革の靴と起毛の靴は手入れの手順・道具が全く違う
- 手入れは起毛の方が簡単
- ライターを使う時には特段の注意を!
今回は起毛素材の靴の手入れ方法を紹介しました。
手順は異なりますが、一度手入れ方法を覚えてしまえば本革の靴よりも簡単に手入れができるので雨用の靴や2足目、3足目の靴として検討してみてはいかがでしょうか?
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